Beatles 時代、1曲の長さが3程度というルールがあったのは、レコードの技術的制約だったと聞いたことがあります。そのため、レコードの普及にあわせて人気が出る音楽は、必然的にあのその時間に収まるフォーマットになったのだという説です。
最近、TikTok でオリジナル音楽が流行ることがありますが、そういう曲は、十数秒しかなかったりします。ワンフレーズです。
ひとつバズった楽曲を見つけたら、膨大な数の作品が見つかります。そういう動画を見ていて、革新的だと思ったのは次の点です。
- 著作権がゆるい
そもそもだれが元ネタなのかも知らずに、みんな拡散しているのです。最近よく見るけどこれなに?という感覚です。リメイクしている人たちは知っているのかもしれませんが、大半がオリジナルをそれほど意識しないで投稿しているように見受けられます。 - 収益モデルが従来と異なっている
そもそもが無料で投稿した動画なので、収益モデルもなにもありません。もちろん、YouTube に載せて広告収益というモデルが存在はしていますが、見ている限り大半の事例ではそこには直結していないようです。それよりも、こういう曲を作った人という個人の信用や評価の蓄積がなによりの収益となっています。 - 短い
もうバズらせるために1曲を作る必要が無いということです。10秒でも刺さるものは刺さるし、なんならそのほうが消費を容易にし、また拡散を容易にするということです。
費用対効果を考えたら、タイアップ曲をわざわざ CD 時代のフォーマットで4-5分でフルで作るよりも、15秒で収まる曲を作ったほうが広まる可能性があるのではないか?と思いました。
プロのアーティストがこれから、より短い曲を投稿することも考えられます。そこで聞かれたらはじめて、フルコーラスで作り直すというような、アジャイルな手法が広まっていくのではないでしょうか。
ビジネスモデルも、楽曲購入による直接的な収益を狙うのではなく、ファンを獲得することにより、承認欲求と信用価値を得ることに移行していくのではと見ています。
ストリーミング全盛の今、すでに僕自身は誰の曲なのかも知らない曲をプレイリストのおすすめのままに聞いています。Spotify のアルゴリズムに全面的に任せています。かつて CD から取り込んだ音楽を iTunes で聞いていたのですが、さっき見たら iTunes Match で過去からのライブラリーをクラウド同期するプランが5年前に解約となってしまっていました。古い iTunes ライブラリーに接続されたマシンはもう無いので、データが失われたのですが、何が無くなったのかもわかりません。
そして Apple は今、空間オーディオで攻めています。あれは大変に印象的で、音楽の体験を変えるのは間違い無いでしょう。AirPods もまた、生活を変えるレベルでの体験の変化をもたらしました。空間オーディオとの組み合わせは強烈で、つけるのを忘れたのではないかと思うことが多々あります。
音楽のフォーマットは、劇的に変わっている最中なのかもしれません。