アメリカ市場全体の下落や、直近の仮想通貨市場の不調を受けて、クリプト系企業のレイオフが増えています。特に Coinbase の従業員18%カットは目を引くニュースになりました。
これによって仮想通貨市場の方向性を悲観する反応がでることは想像に難くありません。しかし別にこれは特別な事ではなく、むしろ会社が健全に動いていると考えることもできます。
外部環境に起因して業績が悪くなった時に、ある程度大きくなった企業の宿命として、レイオフは訪れます。規制と戦う業界である仮想通貨、民泊、ライドシェア、乗り物系などは、特にそうです。仮想通貨業界に関しては、価格変動のボラティリティーがそもそも異常に高いわけで、下落時には機動的なダウンサイジングが必要になります。一方で上昇も急にやってくるし、その時には採用が加熱するので人材の流動性が極端に下がってしまいます。中長期の見通しを確立して複数のシナリオを用意することがとにかく重要なわけですが、シナリオに従って高速に判断を繰り返し続け実行し続けることも必須です。今回も、そんな判断と実行が繰り返されたに過ぎません。いくら信条として仮想通貨価格の上昇、復活にかけていても、株価に反映されなければ評価されないわけで、全滅を避けるためには辛い判断も繰り返す必要に迫られます。
レイオフは必ずしも悲観的な出来事のみを意味しません。全滅することを避けた上に、より絞られた状態で課題解決に挑める体制が構築できるとも解釈できます。それに、レイオフがあるからこそ、それを機に先進的なプロジェクトに関わっていた優秀な人材が放出され、スタートアップに流れるエコシステムは発展します。未来への投資はどうしても先に切られる運命にあるので、先進的なチームほど流動的です。
今回もこのレイオフ組の中から、次の大型クリプトスタートアップが出てくることでしょうし、あるいは他の有力なスタートアップに強力な仲間として加わることでしょう。荒波を生き残ったチームは、きっと今回レイオフを発表し生き残った企業によって買収され、双方に高い価値をもたらすことでしょう。それは残酷で過酷な競争ではありますが、いわゆるスタートアップらしい環境です。
そこまでを含めて考えれば、一時的なレイオフは悲観するものではありません。エコシステムの発展には必要不可欠であり、繰り返され続ける新陳代謝です。もちろんそれは、当事者の気持ちから視点をあえて離しての意見ではありますが。
問題を感じるとすれば、このような機動性を持てない日本企業の将来です。サイズ変更は容易ではありませんので、読み間違えたら終了です。人材の流動性も低いので、やはり日本のカルチャーとスタートアップ、イノベーションってのは相性が良くない印象です。