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雑記

AIoT 時代の人間以外へのブランディング

2024年頃から、Tesla は T のロゴを減らしはじめた。ブランド認知のためにテキストロゴを打ち出している側面もあっただろうが、最近はそのテキストすら削りはじめたように見える。おそらくブランドデザインとして、次のステージに進もうとしているのだろう。

最終的にはテキストも消え、フォルムだけで「それだ」と認識される方向へ向かっている。一般的なコンシューマー製品において、それは最上級のアプローチであり、ごく限られた勝者だけが到達できる究極のブランディングの形だ。

Macintosh 時代、Apple のリンゴロゴがあらゆる場所に使われていたが、Steve Jobs がそれを減らすよう指示したという話を思い出す。結果として、今ではシルエットだけでも MacBook や iPhone とわかる。フォルムそのものがブランドを形成し、模倣品まで生まれるほどだ。

ブランドとは本来、焼き印であり、他者との差別化が目的だ。人に効率的に認知されることを狙い、考えさせずとも本能的に「それだ」と伝えることが重要になる。そのために、人類が自然との共存の中で獲得してきた本能を想起させ、脳の認知プロセスに働きかける手法は今も有効だ。無機質なブランドイメージを構築してきた Apple や Tesla でさえ、プロダクトデザインや UI 設計でそうした要素を組み込み、現在の価値を形作ったと僕は思う。

だが、それは今後も通用するのだろうか。

人間の数は、AI や IoT デバイスの数と比べればごくわずかだ。今は人間が支払う側だから、その価値を最大化する方向へ市場は動いている。しばらくは変わらないだろう。だが、人間に認知されること以上に必要なブランディングが、この先はあるのではないか。

そう考えると、Apple や Tesla、そして Big Tech 各社の製品は、次のステージへのチケットをすでに持っているように見える。UWB チップなど新しい通信規格を採用し、光学的認識に最適化した形状にすることで、人以外からの認知を効率化している。Google の SEO におけるメタタグや、Amazon の段ボールですら、その一例だ。

従来はインターネットプロトコルによる固有 ID では不可能だった、あるいは高コストだった個別認識や認証が、センサー技術や暗号技術の進化によって容易になりつつある。エネルギー効率も改善し、物理的なメッシュネットワークも整い、ブランディングはついに次の段階へ移ろうとしている。

ブランディングの本質は差別化と付加価値の創造だ。そのために人間の脳に普遍的に存在する文脈やメタファーを活用したり、露出を増やして既存の認知を上書きする。僕はマーケティングの専門家ではないが、現状はそう理解している。

そして今、その対象は人間である必要があるのかという問いが生まれる。
人間が意思決定の主体であり続ける保証はない。限られた市場での差別化に、どれほど意味があるのだろうか。

もちろん現時点では、人間へのブランディングには意味がある。だがその先に進むなら、Apple 製品が統一されたデザインを持ち、Tesla が無機質で抽象的な形状へ向かうように、限られた計算資源の中で効率的に認知されることこそが価値を最大化する道になる。無個性化はデバイスによる認識効率を高め、人間の認知負担も減らす。

いつまでも「人間が意思判断を担う」という前提にとらわれず、これからのブランディングは設計されるべきだ。

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雑記

クラウドを拒否した AI

Apple はなぜクラウド AI を作らなかったのか

なぜ、生成 AI ブームに乗らなかったのか。
なぜ、自社の大規模言語モデルすら発表しないのか。
AI ではなく、Apple Intelligence がやってきたのか。

その問いに対する答えは、「戦略」だったというより、むしろ「制約」だったのではないかと思っている。
クラウドを選ばなかったのではなく、クラウドを選べなかったのだろう。

もちろん iCloud はあるし、通常の企業では比較にならないほどのインフラは保有している。しかし、Google や Meta のように、検索や広告やソーシャルメディアの中で、ユーザーの行動ログとテキストデータを日々集め、ラベルを付け、数十年かけて構築してきた巨大なクラウド基盤とデータセットを、Apple は持っていない。

Apple としては、莫大すぎる自社の顧客を満足させられるほどの、大規模なクラウドを構築する技術的・事業的資本を、そもそも持ち合わせていなかったのだろう。社会インフラとして普及するレベルの製品があるからこそ、国ごとの対応も含めて考えれば、統一したクラウド環境を保有することは簡単ではないとわかる。

その結果としてたどり着いたのが、クラウドを諦め、ローカルで完結する AI なのだと見ている。

iPhone の中に住む AI

Apple は、iPhone 単体で機械学習を実行できるように設計した。Apple Silicon による独自アーキテクチャ。NPU(Neural Engine)が搭載され、画像分類や音声認識、感情推定までもがデバイス内で処理される。
元々は、プライバシーの問題への対応のためだった。ユーザーの顔写真、音声、歩数、バイタルデータ、位置情報。それらをクラウドに送らず、デバイス内に閉じ込めて処理する。

同時に、電池の最適化の問題にも、Apple は取り組んでいた。長い間かけて築いてきた、大画面化というバッテリー容量の大型化。有機 EL の採用。MacBook で注目を浴びた高出力かつエネルギー効率の良い UMA(Unified Memory Architecture)。それらを駆使して、ネットワークに常時接続しなくても、電池を大量に消費せずとも、AI が機能し続けるエッジ側の計算資源を極限まで効率化していった。

それは途方もない挑戦だ。自社で半導体を作り、OS を作り、ミドルウェアもフレームワークも構築し、機械学習モデルと統合する。ARM アーキテクチャに賭け、電力効率と処理能力のバランスを極限まで調整する。考えただけでも気が遠くなりそうだ。

Vision Pro のセンサーは“感情”を学習する

Vision Pro には、カメラ、LiDAR、赤外線、視線追跡、筋肉反応センシング、空間マイクなど、人間の内面に触れるためのセンサーが多数搭載されている。これらのセンサーは、単に「見る」「聞く」だけではない。
たとえば、ユーザーが何に視線を向け、瞳孔を計測し、どのタイミングで呼吸が変わったか、頬の筋肉がどのくらい収縮したかまでを感知している。それによって、「購買意欲の兆し」「好意」「不安」「疑念」すら検出できる可能性がある。

そしてその情報は、クラウドには送られない。ユーザーの中に閉じた、パーソナルな AI のための情報として、蓄積されていく。

バイタル + ジャーナル = 記憶の AI

Vision Pro では、視線と表情が記録される。 Apple Watch では、心拍数や体温、睡眠時間が記録されている。iPhone では、入力したテキストや撮影した画像が記録される。

そして Apple は、「Journal(ジャーナル)」アプリによって、それらを日付単位で統合する体験を提示し始めている。X や Meta へのカウンターであり、開かれ場 SNS の危険性と中毒性に対する Apple なりの解決策だ。

今日、誰と話して、どこにいて、何を感じていたか。これらの記録が、自然言語でまとめられ、“記憶を持つ AI”を育て始めている。しかも、もちろんそれらがすべて端末の中で完結している。

クラウドに集約するのではなく、ユーザーの中にだけ存在する AI が、育ち始めている。

クラウドを拒否して AI は人格を持つ

Google の AI は、誰にとっても同じモデルだ。少なくとも今のところは。ChatGPT も、Claude も、Gemini も、基本的には「パブリックな知性」として設計されている。

だが Apple の AI は違う。“あなたの中にしか存在しない知性”を育てようとしている。

Apple の戦略は、クラウドの否定ではなく、クラウドへの“諦め”から始まったのかもしれない。だがその制約が、結果的にまったく別の可能性を生んでいる。

人格を持つ AI、記憶を持つ AI、あなたとだけ過ごした AI。それは、クラウドには絶対に実現できない領域だ。

クラウドを拒否した AI は、人格を持つに至るだろう。

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AI がエッジ側に存在する時

人々が自分用に特化された<AI>を持ち歩くことが、スタンダードになりはじめた。これは拡大の方向に進んできたが、Apple Intelligence が始まって以来、それは日々体感できるようになった。

クラウドで動くものと比較すれば、まだ課題もある。でも、重要なのはそこではない。
例えば iOS 端末にある圧倒的な個人情報が活用されれば、これまでにない使い方が可能になるし、精度もまったく新しい手法により急上昇する可能性がある。
そしてやがては、インターネットに繋がっていない場所でも、完全にオフラインで AI が動く時がやってくる。それ自体が、ひとつの社会的な転換になる。

スマートフォンはもう、ただのパーソナルコンピューターではなくなる。
ひとつの AI サーバーであり、個人の記憶装置であり、意思決定支援システムになる。通信を前提にしない、自己完結した対話と処理を行うローカル AI がやってくれば、プライバシーは再定義され、ソブリン・コンピューティングが実現する。

まさに、拡張された脳だ。自分のことを学び、自分の中で動き、自分のために最適化されていく。何をどう残すか、どこまでを学習対象とするか、どこまでを共有するか。そうした判断がすべて「自分の中」で行われる。いまのクラウド前提の AI とは、まったく異なる世界がそこにはある。

企業の中にサーバーがあった時代。
クラウドの中にサーバーが集約された時代。
そして次は、個人の中にサーバーが分散されていく時代。

きっとこの流れは止まらない。

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Notes.app を Markdown っぽく使えるようにした

macOS の Notes.app で最低限の Markdown 記法が使えるようにした。
といっても、完全なパーサーを組んだわけではなくて、見た目の整形だけ。それでも十分便利でようやく生きていける。

もともと Hammerspoon を使って macOS 全体に Emacs ライクなキーバインドを入れていたので、そのスクリプトを拡張する形で実装している。
> quote とか # heading みたいな記法を打つと、自動的にリッチテキストに変換される。Notes.app 上で普通に使える。

Slack や Asana のように、Markdown で入力してリッチテキストとして整えたい人にはちょうどいいと思う。

GitHub に公開した。

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雑記

Apple はいつまで蚊帳の外にいるのか

ChatGPT がいくら盛り上がっても、AI ブームが来ても、いつもの通り我が道を行く Apple。残念ながら短期的には、Apple が直接的に収益を得るチャンスが無い。ネイティブアプリも存在しないため、OpenAI のサブスクモデルに決済レイヤーとして仲介することもできず。

そして Microsoft と Google が必死に、人をデバイスの外へと引っ張り出そうとしている。デバイスの外で、自社のブラウザーを通して、AI との対話を継続させようと試みている。Apple のハードウェアはただの対人的な最終接点であり、計算も対話も Apple が介さないレイヤーで完結させることに徹している。すでに、仕事や生活のための最高のアシスタントとなれる AI を全面に押し出して、得意のクラウドサービスへと人を誘っている。手元の端末は、電池さえ長持ちすれば良いと言わんばかりに。

プライバシーを盾に、クラウドから人を引き剥がし、独自のクラウド環境・サブスクモデルへと囲い込む Apple の戦いは、最終局面でひっくりかえされそうだ。Apple は自らに課した縛りにより、デバイスの外の情報にアクセスができない。仮に Apple が Generative AI に歩み寄るとしても、独自のハードウェア内部に隔離された装置だけでは、競合に勝る性能が生み出せない。

Apple に情報がなくても、Apple のデバイスにはある。隔離された領域には、桁違いの個人情報がある。うまくモデルが噛み合えば、エネルギー効果の高い高性能な AI が誕生する可能性はある。それに、iPhone/iPad は当然として、Watch や AppleTV、AirTag なんかも含めれば、情報源や計算資源は相当量が市場に放出されていると考えることは可能だ。AirTag の位置特定メカニズムがそうであったように、思いがけない Apple の顧客資源の転用が起こる可能性はあるのではないだろうか。

データセンター側に収集した膨大なデータをデータセンター側で高度な計算能力によって解析する先行者と、端末に隔離したデータを断片的にユーザーに持たせている Apple。融合したら世界は激変するだろうけど、そうは成りえないわけで、この先も排他的な囲い込みによってライバルの勝利を確定させない段階へと進む。

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市場 仮想通貨

2022-10-21 市況

集計している指標の検証、1周間ぐらいを目処に確認する流れを実践しています。

Apple

比較対象として Apple の状況。

株価は$147で先週の$142から若干の上昇。時価総額は$2,366Bで352兆円。円安が急激に進んだ影響もあって円建てでは341兆円からの上昇が大きく見える。

DeFi

TVL は$27Bで横ばい。Apple の時価総額比では1%強、4兆円で推移。DeFi Pulse index は80から86へ上昇。

Bitcoin

$19,039で先週の$19,173からの変化はわずか。時価総額は$364Bの54兆円。先週は$367Bで54兆円。円安効果で円建てでは変化が少ない。Apple の時価総額比で15%と、先週の16%からは下落。
Hash Rate は256EHで、先週の247EHより上昇している。Difficulty は32Tで先週の35Tから下がっている。

Ethereum

$1,283で先週の$1,296とやはりほぼ変わらず。時価総額は$157Bで23兆円。先週の$159B、23兆円からは大きく変わらず、引き続き Bitcoin の半分以下。Apple の時価総額比は6%ほどで先週の7%から下落。
Staked ETH は15Mで先週の15M弱から微増。

USDT

発行量は$68Bで10兆円は変わらず。Ethereum のさらに半分で Apple の時価総額比も3%弱。

Ethereum Classic

$21で先週の$23から若干下落。時価総額は$3B弱の4,500億円ほど。先週は$3Bで5,000億円だった。
Hash Rate は137THで、先週の15THからどんどん下がる。ついに150TH以下まで着た。Difficulty は1.81PHで先週の1.98PHから上昇。

Kadena

$1.26で先週の$1.34から下落。時価総額は$0.25B、400億円。先週は$0.27B、で400億円。
Hash Rate は167で、先週の183PHから下がっている。Difficulty は6EH、先週の5.7EHから上昇。

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市場 仮想通貨

2022-10-13 市況

自分用のメモとして、集計している指標のうち特に重要なものをまとめてみます。データを眺めているだけではわからないこともあるので、あえて公開用の文章として残してみる実験です。

Apple

まず比較対象として Apple の状況。集計しているデータの中でも重要なもののひとつ。

株価は$142で若干の上昇。時価総額は$2,298Bで341兆円。

DeFi

TVL は$27Bで今週徐々に減少している。Apple の時価総額比では1%強、4兆円をかろうじて保っている。DeFi Pulse index は80。

Bitcoin

$19,173と、相変わらずの2万ドル以下での推移。時価総額は$367Bで54兆円。Apple の時価総額比で16%となっている。
Hash Rate は247EH、Difficulty は 35T。

Ethereum

$1,296とほぼ変わらず。時価総額は$159Bで23兆円。Bitcoin の半分程度の水準に落ちている。Apple の時価総額比は7%ほど。
Staked ETH は15M弱で変わりなし。

USDT

発行量は$68Bで10兆円。Ethereum のさらに半分で Apple の時価総額比も3%。

Ethereum Classic

$23で横ばい。時価総額は$3Bで5,000億円。
Hash Rate は150THまで下落。1ヶ月経過して落ち着く水準が見えてきた。Difficulty は1.98PH。

Kadena

$1.34で変化なし。時価総額は$0.27B、で400億円。
Hash Rate は183PHで上昇傾向。Difficulty は5.7EH。

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雑記

買ってはダメなガジェット

はじめに

ダメは言い過ぎかもしれません。けど、たくさんガジェットを買う者として、どうしても満足できない物については残しておきたかったので書きます。

先に断っておきますが、どの製品も使っています。日常的に使っています。元々物をあまり買わないミニマリスト志向であり、限られた数の良いものを長く使うことを大切に考えています。バックパックは20年使っていますし、他にもそれぐらいの時間軸で使い続けているものがたくさんあります。

それでも、ミニマリストには到底なれないぐらいには、ガジェットが好きです。僕の唯一の消費行動が向かう先になっていると思います。

では本題です。買ったし使って入るけど、正直不満の方が大きく、満足できなかった物たちです。

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雑記

肉体及びデバイスに対する愛情の欠如

忙しい時に限って、余計な問題で足止めされるものです。日頃からの適切な準備を怠っていれば、長期的に見てコスト高になることは既に学習しています。良い道具、適切な道具を正しく使うことは思った以上に大事だったと昔の自分にも教えたいくらいです。でもそれは同時に、何に重きを置くのかという、価値観のスライドも引き起こすのだと感じています。

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iPhone を買い替える理由が完全に無くなった

ガジェット好きとしては残念で悲しいことですが、これまでだましだまし買い替え続けてきた iPhone も、これまでかもしれません。もう買い換える理由が見当たりません。