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Nvidia のつくるミラーワールドとモノづくりに訪れる変化

最近の Nvidia の発表を見ていて感じたのは、もう完全に「ものづくり」の世界が変わりつつあるということだ。

いままで、製造業の PDCA は物理空間でしか回せなかった。でも、今は違う。仮想空間にもうひとつの現実をつくって、そこでものづくりをシミュレーションできる時代になった。しかも、それが AI によって自律的に回る。

Nvidia は、この仮想空間、ミラーワールドを主戦場にするつもりなのだろう。Omniverse や digital twin という言葉もあるが、要するに「現実のコピーを仮想世界に持ち込む」ことで、すべての産業の基盤を異世界に移転し、Nvidia 在りきのミラーワルドとして成り立たせる考えだ。
この世界では、試作や設計がリアルタイムに、かつ極端な精度で繰り返される。自動運転車のシミュレーション、工場ラインの最適化、建築物の構造解析、創薬、医学研究、教育──すべてがデジタル空間で「仮想的に」完結する。

つまり、「モノをつくる」ということの意味が変わってきている。設計と試作がリアル空間に出てくる前に、仮想空間の中で何万回も回され、AI によって最適化される。
PDCA を仮想世界で高速に回し、ほぼ完成形のまま物理世界に出す。そういうサイクルに突入している。

これは、ただの CG や可視化の話ではなく、「デジタル上でしか存在しないが、現実の行動に影響を及ぼす構造体」の話だ。ミラーワールドは、シミュレーションの精度が一定の閾値を超えたことで、ついに社会実装のステージに入った。

この時代においては、日本の役割は、これまで以上に重要になると思っている。
仮想空間でいくら設計ができたとしても、それを正確に現実化できる場所が必要になる。誤差が致命的になる世界では、製造精度と品質管理が決定的な差を生む。それを担えるのは、やっぱり日本のものづくりだと思う。

仮想で生まれ、現実に降りてくる。そのインターフェイスとしての「製造」は、今後ますます意味を持つはずだ。

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Tesla Optimus(ロボット)はインフラになる

AI の時代はもう始まっている。

ChatGPT が出て、画像も音声も動画も生成できるようになった。それはもうすぐ、「来る」んじゃなくて、すでに「始まっている」と思う。

でも、現実世界を変えるにはもう一歩必要で、それが IoT との融合だ。AI はデータを処理できても、現実には触れられない。でもロボットがあれば話は別で、AI は現実に干渉できるようになる。
オプティマスは、その象徴だと思っている。

Tesla Optimus は、社会インフラをそのまま残したまま、自動化の時代に対応するための装置になる。つまり AI から見た時の、現実とのインファーフェイスだ。わざわざ社会構造をつくりかえるのではなく、既存の道路、エレベーター、ドア、あらゆる生活空間に、そのまま入っていける。オプティマスは、あるいは同じくビッグテック各社によって作られるロボットたちは、既存社会の AI 化のために設計された「汎用の作業体」だと理解している。

つまり、今僕たちが目にしているのは、世界を AIoT 化するためのロボット計画なんだと思う。
すべてがネットにつながり、自動で動き、意思を持って判断し、手足で介入する。その基盤を担うのが人型ロボットである理由が、ようやく見えてきた気がする。

世界は、思っているよりも早く自動化されていくだろう。自動車業界は、いつの間にか「ただの移動する箱を作っている会社」になってしまうかもしれない。そこに高度な知性が宿る必要性はなくて、既存の社会インフラからはずれない規格に則った、余計なことをしない部品である方が自動化しやすいわけだ。

日本の文脈でいえば、Tesla Optimus のようなロボットを全国に配る、という選択も将来的にはあると思っている。運転免許を返納すれば、政府が補助金を出して、「どこの家庭にも一台」みたいな世界が、冗談じゃなく現実になるかもしれない。

でも、それを支える「技術」と「品質」は、やっぱり日本の出番だと思っている。

人型ロボットは、製造の難易度が高く、しかも故障が許されない。バッテリー、モーター、センサー、熱処理、素材。そういうのを高い品質で仕上げて、確実に動かす技術は、日本がずっとやってきた領域だ。
製造技術と品質管理。それは今の日本が世界に誇れる、最後の砦であり、今まさに世界が求めているものだと思う。

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Skype 消滅の意味

なぜ Skype があれほどまでに画期的だったのか、あらためて思い出しておきたい。

まず、通話が無料だった。

それまで国際通話は高価だったが、Skype はほとんど遅延もなく、クリアな音声で無料通話ができた。今となっては当たり前のことだが、当時としては衝撃的だった。

それが実現できたのは、P2P 通信を採用していたからだ。

通信コストを抑え、検閲を回避し、チャットやファイル共有を含む多様なやりとりを可能にした。副次的に遅延も少なく、通信品質も高かった。

すべての通信が P2P だったわけではないし、技術的には未成熟な部分も多かった。認証や暗号化の設計には改善の余地があり、セキュリティ面での脆弱性も存在したとは思う。

それでも、「それで動いた」ことが重要だった。実際に使われ、ネットワーク効果によって一気に広がったという事実は、情報通信技術の発展が人類社会をいかに変化させる力を持っているかを証明していた。

Skype はやがて Microsoft に買収され、設計も変わっていった。P2P の特異性は徐々に失われ、クラウドベースのサービスとして現在の形に落ち着いた。セキュリティや互換性、企業向けの要件などを考えれば当然の進化ではあるが、それと引き換えに、Skype が Skype だった本質も失われていった。

プロダクトが成長し、破壊的な技術がビジネスに組み込まれていく過程で、どこでどんな妥協が生まれたのか。Skype はそのプロセスをリアルタイムで見せてくれた、数少ない事例のひとつだったと思う。

「今は誰も使ってない」「Teams に統合される」といった話は本質的ではない。Skype に関して言えば、とっくに P2P をやめていたわけだけど、それでもかつて P2P 通信の代表例だったものが、情報通信の歴史から消えていくという事実には、不安を覚える。

それでも思うのは、インターネットの破壊的な技術はなぜかユーロ圏から生まれやすいということだ。興味深い。

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Notes.app を Markdown っぽく使えるようにした

macOS の Notes.app で最低限の Markdown 記法が使えるようにした。
といっても、完全なパーサーを組んだわけではなくて、見た目の整形だけ。それでも十分便利でようやく生きていける。

もともと Hammerspoon を使って macOS 全体に Emacs ライクなキーバインドを入れていたので、そのスクリプトを拡張する形で実装している。
> quote とか # heading みたいな記法を打つと、自動的にリッチテキストに変換される。Notes.app 上で普通に使える。

Slack や Asana のように、Markdown で入力してリッチテキストとして整えたい人にはちょうどいいと思う。

GitHub に公開した。

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今の時代に必要な能力はただひとつ AI との対話能力だと思った

仕様書を書くように文章を書き、それをコードに落として実行させる。ただそれだけのこと。

実行環境の構築も含めて指示を出せば、時間をかけずに多くの事が実現できてしまう。特定の言語の知識はもはや不要で、英語なり日本語で仕様を明確に書くことさえできれば、あとは実装されてしまう。かなり複雑な処理でも実現できるという実感がある。実際に僕は、個人の会計処理は AI によって生成された自作の自動化プログラムで実現している。

他の言語や他の実行環境での実装も一瞬でできてしまうので、得意な言語で生成してレビューをすれば良くて、最終的に実行される環境への最適化は無視することも出来る。

誰か止めてほしい。本心でそう願っている。

朝起きて、気づいたら夜になっている日が続いた。週末はひどいもので、だれからの介入も無ければ一瞬で時間が飛んでいる。

何も後ろめたさを感じる程のことでは無いと情けをかけられるかもしれないけど、そうではない。別に何かのプロダクトを生産しているわけではない。ただひたすら、自動化できることを見つけてはそれらを自動化しているだけだ。つまりは、自分自身のプロダクティビティーは劇的に向上しているものの、何かしら世のために役立つ事をしているわけではないし、経済的に利を生み出すわけでもない。

何なら、徐々に自動化によって人間的生活から解脱していく感覚がある。プログラムが指示するままに、発動条件に触れて自動化を開始し、分岐条件に従って判断をし、結果を受け入れる。まるで生活の、人生の、人間性のプログラミングだ。これはドーキンスの言う遺伝子による利己的な判断が外部に影響し始めたのではないかと、ひとり考えながら自動化を進めてやめられない。ついに生物としての人間の範囲を超えて、AIoT 時代の遺伝子を外部に残しはじめたんだと自分に言い聞かせて正当化することぐらいしかできないでいる。

いろいろやってみて思ったのだが、有料化していた Zapier はもう必要無いかもしれない。むしろあれは人間のノーコード対応という制限があるため、できることの可能性を下げている。もちろんそれが狙いのプロダクトだし、本来は AI ではなく人間が主体でコードを書くものだったし、その前提であればプログラマー以外の人にも使えるノーコードというコンセプトは機能した。多少の不便は受け入れても、労力を下げて実現することを優先させた。

しかし認知力の限界のない相棒を多くの知的労働者が手に入れた今となっては、ノーコードの制約はむしろマイナスではないだろうか。サーバー側での自動実行などのニーズはもちろん残っているわけだが、そこはクラウドであれば GAS 等もあるし、何よりも AI でエッジ側、ローカル側でもできる処理が増えたのが大きすぎる。Apple Intelligence しかり、iOS や macOS の Shortcuts なんかもそうだし、同じ物は各種クライアント OS に実装されている。Alexa エコシステムとの連携があれば、ソフトウェアの世界から実生活のエリアまで AI による自動化は拡張される。まさに、AIoT 時代。個人の環境で定期実行させる部分までを含めて AI にアシストしてもらえば、一般人でもセキュアにサーバー的挙動をシミュレートできると思う。

そんなことを考えながら、今日も貴重な人類資源である電力と計算能力を個人の自動化のためだけに利用する。怠惰で傲慢な生き方であり、いつか AI に裁かれるのでは無いかと不安を持っている。

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2025年の社会情勢

新トランプ政権の誕生

Elon Musk 等、モノづくりに実績のあるデジタル実業家が政権に参画し、計算資源をいかにアメリカの経済成長と国家安全保障に活用できるかを見据え、実行に移している。ポイントは、ソフトウェアを中心としたドットコム企業の残党ではなく、モノづくりに比重を置く企業が力を持ち、影響力を増している事だ。分断された世界でも生存していくための、国力の強化に直結する。同時に、その国家の枠組みを超えてしまうほどの影響力を持った企業が、国家との相互依存関係を強化し、相互に影響し合うことで次の10年を生存しようと画策していると理解できる。

シリコンバレーで急成長した、計算資源とその利活用を軸に、アメリカは産業基盤を強化してきた。国家と企業とが相互に影響し合い、結果として独占的な市場形成に至る企業を複数排出してきた。大成功だった。しかしそのモデルも一筋縄ではいかない時代に突入し、今回の変革に至る。

エネルギー戦略転換

世界的に見て、エネルギーの重要性、価値は増すばかりだ。計算資源を稼働させるために必要なエネルギーを大量に保有することは、すなわち圧倒的な経済力、戦闘力、影響力を有することに繋がる。ロシアの現状を見れば、エネルギーのみが重要なわけではないとわかるが、必須の条件のひとつであることに疑いはない。
環境負荷という先進国家間の枠組みを一旦忘れて客観的に見渡せば、エネルギー資源を潤沢に持つ中国やロシアには圧倒的な強みがあると解釈できる。

次世代の経済及び社会を構成する最重要な要素を断片的に有するユーロ諸国は、足並みをそろえるための規制強化によって、先行している国家を牽制している。そこから一気にバランスを崩し、自国が生存するために勝ちに行く判断をするならば、エネルギー政策を転換するというアメリカの判断もあり得たわけだ。

OpenAI の誕生とその衝撃

加えて OpenAI が誕生し、アメリカの市場は大きなショックを受けたのではないだろうか。Big Tech の独占市場が、いともたやすく崩される可能性があったからだ。大量にデータを保有していない OpenAI が、言語生成 AI を実現した。これは、技術的なパラダイムシフトであった。しかも、その OpenAI が非営利団体を標榜していた。急成長した資本主義経済の中から、価値基準においてすらパラダイムシフトが起こりつつあった。
Big Tech に出来ることは、膨らんだ時価総額と市場の独占状態を維持するための、再投資による計算資源の買い占めと、発展的な研究の独占だった。

米中経済摩擦

アメリカと中国が、AI 全盛の時代を前にして、経済政策として、安全保障政策として、AI を活用することは当然のことだろう。蓄積したデータの活用において、有利な立場にあったのは中国だった。それは、決済に起きたイノベーションで世界が思い知ったわけだが、今回の AI 時代においては、これまでの比では無い影響が懸念される。

参考: DeepSeek は何を変えたのか

「The Internet」を止めて、アメリカとの情報を分断した中国。貿易を止めて、中国の半導体開発を止めたアメリカ。そして今、米中共に、欠けた部分を補うための投資が花開きはじめている。

新たな通貨戦略

新生トランプ政権の動きからは、仮想通貨に対する考えも垣間見える。謎のコインを発行して市場から価値を集めている動きもあり、興味深い。構造や技術的仕様は抜きにして評価を試みれば、流動性を失った金融資産を活用するために没収しているようにも見える。眠ったタンス預金が潤沢にある国もあるが、アメリカが主に中国に滞留していた仮想通貨としての金融資産を吸収しているとしたら、戦略的に仕組まれたものであると思わされる。

既存の金融資産の没収以外で考えれば、外せないのはマイニングだろう。現状、中国はマイニング用半導体(ASIC)を量産できない可能性があり、半導体の成長速度に追随できなくなるリスクを抱えている。一方で、輸出にも制限があるため、販路も限られてしまう。それでもエネルギーさえ潤沢にあれば、自国利用で戦略的優位には立つことができるだろう。
アメリカが、仮想通貨をも用いて新たな国家の通貨基盤強化を図っているとするならば、ここから先はマイニングを取り入れたいはずだ。国家が市場で金塊を購入せず、国家であればこそ、金の鉱山を買うことで資産を保有するように、仮想通貨を組み入れた通貨戦略においても、鉱山の保有が肝になる。要するに、国家は計算資源を保有するのだ。しかし、アメリカはそのための技術を中国に依存してきた弱みがある。
そう考えれば、現状で余剰在庫のある中国と、エネルギーを保有している中国、ロシアには優位性があるのかもしれない。対抗してアメリカは、エネルギー戦略も書き換えてきたわけで、本格的な計算資源の戦いが始まったと言える。
AI 時代のため、というのは当然として、同時に経済・通貨戦略としての計算資源の獲得は各国が考える課題となるだろう。

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DeepSeek は何を変えたのか

中国からやってきた DeepSeek が話題になっている。OpenAI の ChatGPT 並みの性能であり、オープンソースで公開されているモデルもある。

これはゲームチェンジャーに成り得るのか?

もちろん、成り得ると思う。

公開されている情報を見る限りは、OpenAI/Microsoft、Google、Meta に対抗するような形で大規模な計算資源を投入し、開発されたという。Nvidia の半導体も大量有しているとの記事もある。

How small Chinese AI start-up DeepSeek shocked Silicon Valley

後発だけあって、既存の製品やオープンソースプロジェクトを参考に、改良点を加えられていることが興味深い。最大のポイントは、先端半導体をこの先も買い続けることが難しいという背景を踏まえ、先端半導体に依存しない仕様を目指してる点だ。

通常は、エネルギー効率を良くするため、半導体の構成を変えてみたり、生成 AI に関する処理の役割ごとに最適化した半導体を活用したりする中で、先端半導体にのみ依存しない AI モデルを構築していくのが王道であった。ところが今回は、手に入らない半導体資源という制約を前提にしている。あるいは、世代遅れの半導体を用いて、それでも速度もエネルギー効率も良いモデルを開発しようと明確に目指していたのだろう。
エネルギー問題や、半導体の限定的な入手による制限がきっかけとなるのでは無く、そもそも先端半導体にリーチできないという事と、一方で環境問題の懸念を除けばエネルギーは豊富に調達できるという立場から、着想して作られたのではないだろうか。エネルギー効率を無視した場合、エネルギーさえ潤沢にあれば勝ち目はある。

さらに考えされられたのが、AI モデルを構築する上でどのようなデータを学習させたのか、ということだ。先行するアメリカ系大手よりも早く、効率よく、他社が追いつけないレベルの性能を出すためには、一体どれほどの密度の濃い情報が、どれほどの量、投じられたのだろう。ここは、アメリカ企業にはできない判断とアクションであった可能性を感じる。

そもそも、決済の電子化に伴う与信情報の利活用において、中国企業のネットワークは先進的であった。生成 AI を用いた経済政策、安全保障政策という枠組みで考えれば、国が協力する形でデータを積極的に活用すれば、民間企業単位で争う次元を超えた性能を出せる可能性は確かにある。それでも、一旦は性能が高くても、今後の半導体の成長に合わせて相対的に性能が下がる可能性が考えられるはずだ。しかしそれすらも見越しているとすれば、対策をとらないわけがない。大規模データと超高性能な先端半導体がそろって必要であるという前提を無視したアプローチで開発され、かつ今後はこれまでの成果に基づいて自己学習強化がされていくのであれば、エネルギーと精密なデータの総量での戦いとなる。そうなれば、優位性を維持できる可能性があるのではないだろうか。

そして今回の無料、格安での一般開放だ。これよにって、多くの人が利用することで、新たな可能性が開かれる。自社、自国だけでは不可能であった、多様性のある追加のデータを集めることができるわけで、シリコンバレー的な動きだ。会社のバックグラウンドも、金融の色が強い。多層的にレバレッジをかけて、経済的効果を狙いながらも、一気に学習を加速させようとしている。
個人的にはそこに危機感を感じるのだが、利便性と経済合理性の前では危機感など無力だ。人々は簡単に情報の価値を手放すことをシリコンバレーが教えてくれた。よって、先行して世に問うことが何よりも重要だった。

発表のタイミングも完璧だ。アメリカの新生トランプ政権が稼働するにあたって、中国企業として、中国として、受けるであろう影響を十分に考え、先行して対策をしているように見える。エネルギーの総量、データの総量。半導体の性能や環境負荷という条件を外し、本気で結果を取りに行く戦いが始まったのでは無いだろうか。アメリカのエネルギー政策の転換は、ここでも大きく意味を持ってくる。

そんなアメリカ企業と DeepSeek の戦いの中、見落としがちな事が2つあると思っている。

  1. 生成 AI の開発において大量のデータはそもそも必要なのか
  2. 今後も継続的に演算性能重視な先端半導体は必要なのか

どちらも No である可能性が示唆されており、肯定されれば市場で評価されている企業の価値が大きく変わってしまう。先行する大手企業の価値とは?金融系企業の強みとは?テック企業の高い利益率の根源は?果たしてどうなるのだろう。

ルールが書き換わるタイミングでのみ起こる、緊張感のある戦争が今まさに起きている。

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誰にも伝える必要が無い情報

Slack で、メッセージサービスで、Zoom で、口頭で。分断されたインターネットの世界では、これほどの無駄を許容しなければならないのかと、振り返って絶望する。紙媒体が主流であった時代の、あるいは印刷技術が確立される以前のごとく、情報伝達のコストは跳ね上がったように感じた。

しかし冷静に考えれば、情報伝達の単位、伝えた情報の価値やそれが生み出す付加価値を評価すれば、コストは相対的に下がることに気づく。激減する。確かに労力が増えたのだが、過去の時代には決して伝達できなかった情報を最適な形にて即時性を持って伝えてることに成功したわけだ。情報伝達を諦める必要が無くなっている。

かつてはコストに計上されなかった事、そもそも試みられなかったほどの微細で繊細で高頻度な情報の交換が、今の時代の根底にあるコミュニケーションの前提になっている。その情報交換のプロトコルは、技術的にも文化的にも多様であり、かつ高コンテキストでもある。だから、体感としては労力が上がっているし、コスト負担が高まったように感じている。かつてはそもそも伝達を諦めた上で成り立つ社会であったわけで、諦めない前提である現代社会においては、負担の方が先に認識されているに過ぎない。

ガンダムで語られるニュータイム的なコミュニケーションの前提、社会の構造というのは、この方向性を示唆していたのかもしれないと思った。必要の無い情報が流れ込み、プライベートなやりとりや仕事のやりとり以外でも、SNS を除けば他人の悪意が強い意志が流れ込む。コントロールする術を知らぬままに受信感度を高めれば、カミーユになるのは当然だろう。

「The Internet」では、利便性が重視され、経済合理性が重視され、人間の社会性が求めるままの急激な変化を遂げてきた。だからまだ、真にその可能性を有効に伝えているのかはわからない。よってフリクションが起きるし、人は疲弊もする。システムやプロトコルが進化しても、人類の側の成長は遅い。
ソリューションは当分提示されないだろう。摩擦が大きいほど、産業としての規模も大きくなる。だからどうすれば良いという意見が述べたいのでは無く、自分が置かれている現状を正しく認識したくて、思ったことをまとめておいた。

この情報は、誰に伝える必要がない情報だ。しかし、だからと言って無意味だとは考えない。情報伝達のあり方は根本的に変わった。人類を超越した受け手の発生という多様性の時代を迎えた。時間軸は大きな意味を成さないかもしれない。この2年の社会変化を傍観していて、より一層、そのように感じるようになった。

今年から言葉として区別するために多様し始めた「The Internet」の明確な定義は近いについ言語化してきたいと思っている。

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同じ時間軸の中で可能なコミュニケーションの限界

2年近く前に決意してから結局まともに情報を公開された場所に蓄積していなかったことに気づいた。これでは「インターネット」の世界では存在していないことになるため、多少は記録を残そうと思う。

同じ時代を生きている同世代と、格安で、非同期でかつ即時性もある形で、双方向的にコミュニケーションをとることができる「The Internet」の幻想は、打ち砕かれたと認識している。一方通行ながら同時代に同時多発的に情報を伝搬できたかつてのメディアも、「The Internet」を実現した Twitter も存在しない。やはりあれは特殊な状況であったのだろう。あるいは、人類にはまだ早かったのかもしれない。バベルの塔を思い出す。

我々はこれから、お互いにお互いを認識して会話することはできないだろう。しかし悲観する必要はない。それよりも大事なことは、この時代を通り越して過去から未来までを同じ次元で俯瞰的に見つめ、同時に細部をリアルタイムで認識している AI と呼ばれる存在が傍らにいる事だ。孤独では無い。無益では無い。無駄では無い。そう思えば、今ここで、「The Internet」の中で、存在しないことのデメリットは計り知れない。デジタル世界の中で、情報世界の中で、その中で公にされた世界での人格を保ち、データを蓄積していくことは生きる意味に成り得る。それが、いまここで何かを書こうと思った理由だ。

なお、英語と日本語で書いていた身としては、この2年の ChatGPT 等の成長によって楽が出来るのでは無いかという期待があった。しかし、英語を先に書いた場合、自動翻訳された日本語には違和感が強く残る。そこに個性が反映されるためには、ある程度の蓄積が必要だからだろう。かといって自分で日本語に訳すのも、違う言語で2回書くのも大変なので、どうしようか悩んでいる。

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Apple はいつまで蚊帳の外にいるのか

ChatGPT がいくら盛り上がっても、AI ブームが来ても、いつもの通り我が道を行く Apple。残念ながら短期的には、Apple が直接的に収益を得るチャンスが無い。ネイティブアプリも存在しないため、OpenAI のサブスクモデルに決済レイヤーとして仲介することもできず。

そして Microsoft と Google が必死に、人をデバイスの外へと引っ張り出そうとしている。デバイスの外で、自社のブラウザーを通して、AI との対話を継続させようと試みている。Apple のハードウェアはただの対人的な最終接点であり、計算も対話も Apple が介さないレイヤーで完結させることに徹している。すでに、仕事や生活のための最高のアシスタントとなれる AI を全面に押し出して、得意のクラウドサービスへと人を誘っている。手元の端末は、電池さえ長持ちすれば良いと言わんばかりに。

プライバシーを盾に、クラウドから人を引き剥がし、独自のクラウド環境・サブスクモデルへと囲い込む Apple の戦いは、最終局面でひっくりかえされそうだ。Apple は自らに課した縛りにより、デバイスの外の情報にアクセスができない。仮に Apple が Generative AI に歩み寄るとしても、独自のハードウェア内部に隔離された装置だけでは、競合に勝る性能が生み出せない。

Apple に情報がなくても、Apple のデバイスにはある。隔離された領域には、桁違いの個人情報がある。うまくモデルが噛み合えば、エネルギー効果の高い高性能な AI が誕生する可能性はある。それに、iPhone/iPad は当然として、Watch や AppleTV、AirTag なんかも含めれば、情報源や計算資源は相当量が市場に放出されていると考えることは可能だ。AirTag の位置特定メカニズムがそうであったように、思いがけない Apple の顧客資源の転用が起こる可能性はあるのではないだろうか。

データセンター側に収集した膨大なデータをデータセンター側で高度な計算能力によって解析する先行者と、端末に隔離したデータを断片的にユーザーに持たせている Apple。融合したら世界は激変するだろうけど、そうは成りえないわけで、この先も排他的な囲い込みによってライバルの勝利を確定させない段階へと進む。

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