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雑記

ポストパスワード時代の暗号認証

長い間、インターネットの認証はパスワードに依存してきた。だが、その限界はとっくに見えていた。

覚えきれない複雑な文字列、使い回し、流出リスク。パスワードに頼る世界は、最初から綻びを内包していた。

いま、顔認証や指紋認証といった生体認証と、暗号技術を組み合わせた新しい認証の仕組みが実用化され始めている。たとえば iPhone の Face ID を使ってログインするパスキーの仕組みは、端末上の生体情報とインターネット上の認証を紐付ける。ID・パスワードを廃し、人間の生体情報そのものを鍵にする流れだ。

これによって、漏洩リスクは劇的に下がる。暗号技術は本来、自己責任という原則を持っていたが、いまはユーザビリティとのバランスを取る方向に進化している。

さらに、ブロックチェーン技術とゼロ知識証明を組み合わせることで、「誰にもパスワードを教えずに、本人であることだけを証明する」方法も現実味を帯びてきた。

つまり、今後は次のような世界が見えてくる。パスワードを記憶する必要もない。クラウド上に機密情報を預ける必要もない。自分の「存在」そのものを証明し、認証する。それが、暗号技術と生体認証、分散型アイデンティティ技術が融合することで実現する世界だ。

これまでは、セキュリティを高めれば利便性が落ち、利便性を取ればセキュリティが下がった。だが、いま初めて、両立できる道筋が見えつつある。

そして、この変化は個人の自由と主権に直結する。

誰に預けるでもなく、自分自身で自分を証明できる社会。それは単なる技術革新ではなく、インターネット社会そのものの再定義だ。

“あなた”を証明するものは、これから変わっていく。

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