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雑記

オーバーレイ国家という構想

これまで国家とは、物理的な領土と、それに紐づく制度によって成立していた。税制、法律、通貨、教育、通信、インフラ。すべてが地理的空間の上に重ねられ、国家という枠組みをつくってきた。

だが近年、別のレイヤーが静かに浮かび上がりつつある。それは、物理空間とは別の次元で構成される「計算空間」であり、インフラの上にさらに重ねられる空間だ。そこでは時の流れが人間の認知に縛られない世界であるため、時空を超える可能性すらある。

たとえば、クラウドがすでに物理的なデータセンターの上に成立しているように。あるいは、ブロックチェーンが既存のインターネットの上に重ねられているように。この動きが進めば、いずれは“国家の上にかぶさるもう一つの国家”のような構造が生まれてくるのではないか。

通貨は、必ずしも国が発行する必要がなくなった。データは、必ずしも国境を通過しなくなった。認証は、必ずしもパスポートに依存しなくなった。通信は、国家の規制をまたいでいく。
このとき、情報、計算、認証、通貨、制度といった“国家の機能そのもの”が、上位の構造に吸収されていく。メタ化していく。そしてその構造は、必ずしも国家が設計したものではない。

この流れが進んだ先にあるのが、「オーバーレイ国家」と呼ぶべき新しい構造だと思っている。それは、既存の国家の上に重なり、既存の制度を補完・上書きしながら動いていく。しかもそれは、国境ではなくプロトコルによって統治される。パスポートではなく鍵。法律ではなくスマートコントラクト。軍隊ではなく計算資源と暗号技術によって守られる。

いま、世界各地で「分散型」の名のもとに立ち上がっているネットワークは、単なる技術実験ではない。新しい主権の萌芽なのかもしれない。それが果たして国家なのか、企業なのか、あるいはまったく別のものなのかはわからない。ただ、それが「社会の上に重なっている」という感覚だけは、日々強くなってきている。

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