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仮想通貨 Stablecoin

Terra / Luna の苦難を見てこれからの Stablecoin を考えている

Terra / Luna の設計に関する評価や懸念事項については、以前にまとめています。面白い実験だなという感想だったので持ってはいませんでしたが、持っていれば祭りに参加できたのにという寂しさはあります。さすがに短期間でここまで話題になるとは思ってなかったのですが、こうなったらこの状況から目を逸らさずに、見ておくべきではないでしょうか。

そもそもこの件で Stablecoin 自体が誤解されそうなので、昨日はウェビナーで Stablecoin の解説と、Terra / Luna 騒動との関連を解説したところです。

Stablecoin には裏付け資産、担保があるのか無いのかという基本的なことを質問されることも多いのですが、シンプルに回答すれば、担保があるものと、ないものがあります。

Stablecoin は大別すると3種類存在します。Tether(USDT)や USDC のような、銀行等に担保があるものがひとつめです。オフチェーン(ブロックチェーン外)担保型です。銀行等に金やドルや債権の形で担保があるため、強い規制の対象になるし、動きも遅くなる特性があります。

次に MakerDao の DAI のような、仮想通貨を担保にしたものがあります。オンチェーン(ブロックチェーン上)担保型です。オンチェーン担保型は、仮想通貨の価格動向に合わせて自動的にスマートコントラクトに従って担保資産のバランスを調整し、通貨の価値を上げ下げし、安定させる仕組みです。自動調整される点が理想的ではあるのですが、オンチェーン担保型は仮想通貨市場全体が暴落すると大変です。実際、DAI は一度暴落の危機に合っています。

最後に、今回の Terra / Luna に相当するものが、アルゴリズム型 Stablecoin です。無担保型とも言います。このタイプのプロジェクトは、日本が円を発行しているように、アメリカだドルを発行するように、明確な裏付け金融資産がなくても通貨を発行することはできますよね?と考えているわけです。しかもしれをドル等の主要基軸通貨にペグする事ができると考えているわけです。需要が増えて価格が上がってしまったら、供給量を増やして単価を下げる。需要が下がって価格が下がったら、供給量を減らして単価を上げる。そうやって、1コインが1ドルに固定できるように調整し続けるわけです。中央銀行がやるような供給量の管理によって、価格を安定させ、通貨を流通させる仕組みです。大変野心的で、画期的で、未来的なモデルです。このアルゴリズム型のみ、担保がない異端なものと言えます。担保はないものの、それは国家が発行する通貨に似通ったものであるとも言えなくないため、期待されることはよく理解できます。

というわけで、アルゴリズム型はこれからどうなっていくのでしょうか。このまま消滅するのでしょうか。あるいは、また形を変えて現れるのでしょうか。少なくともこれまでにも、アルゴリズム型で立ち上がって結果的に暴落し消えていったプロジェクトは存在しました。そのため、これもひとつの通過点として人類は学習し、次につながるとは思います。技術的な側面だけをみればですが。

問題となるのは、これに伴う市場の冷え込みや、有効な攻撃手段が存在することが明るみになったことです。また、実際に多くの被害者?を出したことも人々の心理にマイナスの影響を与えています。自己責任なので被害者も何もないのですが、そう言い切ってしまうと完全実力主義主義の近寄りづらい存在になっていくので、補償のあり方は難しいところです。

加えて、損失を被った人が急増したことから発展し、規制も強化されていくでしょう。投資家保護のために、Stablecoin は担保型が主となり、KYC/AML を含めた所有者への規制や流通の制限が課されることでしょう。

Stablecoin は DeFi の中核をなすものであり、DeFi は Stablecoin があったからこそ実経済、金融経済とのつながりを保有できていました。今後アルゴリズム型に留まらず規制が強化されるのであれば、それはすなわち DeFi の成長鈍化につながり、そのプラットフォームたる Ethereum 等の Layer 1 の発展を阻害することにつながるのではないでしょうか。そうなれば、Layer 2 や Layer 0 も影響を受けることは必至です。

失敗したけど立ちあがろうということでは乗り越えられそうにないほどの影響を出しています。市場全体の健全な発展を考えれば、ここから対策を考えて、問題を潰していく必要があります。やるべきことはまだまだたくさん、ということですね。要するに、Stablecoin 市場はこれからまだまだ盛り上がる余地があると考えます。

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