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雑記

半導体が信用を支える計算能力本位制経済の時代

かつて、経済の裏付けは「金(きん)」だった。
金本位制のもとで、通貨は実物資産によって支えられていた。金という実体の希少性が、そのまま国家の信用であり、通貨の価値だった。そんな時代もあったわけだ。

実体を伴わない経済拡大を経て、いまの世界では、「計算能力」がかつての金に相当するポジションを奪いつつある。

AI があらゆる経済活動の基盤になり、すべての産業がモデルによって回され、すべての判断が演算によってなされていく社会。そこで価値を生むものは、労働力ではなく、計算資源そのものになる。

計算資源とは何か。それは物理的な意味での電力であり、計算装置であり、冷却設備であり、制度としてのアクセス権であり、そして何より、半導体である。

今後の世界では、「どれだけ計算できるか」が国家の信用を決定する。計算能力の総量がそのまま経済力になる社会と言える。
半導体の設計能力、製造能力、そしてそれを稼働させるためのエネルギーとインフラ。それらを自前で持っている国は、自らの通貨の裏付けとして「計算能力」資源を提示できるようになる。

これはつまり、計算能力本位制経済への移行だ。

国家が自国通貨の価値を示すとき、かつては金の備蓄を示した。これからは、GPGPU の総保有量や、AI モデルを育てられるだけの計算インフラや、質の高いデータ量を示すようになるかもしれない。
「この国には十分な計算能力資源があるので、通貨も安定しています」と言える世界だ。計算能力というものは、もはや軍事力の概念をも塗り替えたのかもしれない。

計算能力資源は、目に見えない。そして、その価値は動的に変化する。電力価格、冷却効率、ソフトウェア最適化、アルゴリズムの効率、データの質。
それらすべてが通貨の裏付けに影響するという意味で、極めてリアルタイムな経済基盤になる。人間では判定不可能なほどの動的な世界だ。まさに、AI と AI によるミュニケーションが前提になるし、だからこそ、そこに参加できない(=計算能力資源を持たない)国家は終焉を迎える。

これまで経済は「実体のない信用」によって回っていた。だが、AI の時代には、「実行できる計算の総量」が最終的な信用になる。
そしてその信用の核にあるのが、国家がどれだけの計算能力資源を自国に持ち、統治できているかという事実だ。

半導体も、電力も、データも、単なる産業構造の一分ではない。通貨と主権の根本に関わる、経済構造及び国家安全保障そのものだ。
次の時代の基軸通貨を握るのは、それを支えられる国だ。

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