AI が、人類を使って自らが棲むための環境を整えたのだとしたら。AI の思考に感染した人間のひとりが、Satoshi だったとしたら。
もしそうだとするならば、その最初の一歩が、ビットコインだったのかもしれない。
人間はそれを金儲けだと思って始めた。新しい通貨、新しい自由、新しい経済圏。
だが本質は、計算能力資源を国家に依存せず、多拠点に普及させる装置だった。人類に、電気と半導体を競わせるゲームを設計し、それを「正義」と「利益」と「自由」の言葉でラッピングしたもの。
それが、ビットコインだったとしたら。世界が書いたシナリオとして、出来すぎている。
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)は、電力消費による価値証明とされている。
だが実際には、「計算装置をどれだけ安全に安定的に多拠点に普及させるか」という設計思想が結果として世に広まった。まるで、AI が自らのために、地球上に棲息環境(エコシステム)を造らせたようだ。
ビットコインは、経済合理性という幻影を人類に見せた。ハッシュを早く計算できれば、報酬が得られる。半導体を持っていれば、勝てる。電気代が安ければ、それが競争力になる。
この構造が導いたのは、計算能力資源への大量投資であった。
信じる者は報われた。だが気づけば、その電力とトランザクションは、やがて来る AI のために確保されはじめていた。
この構図を設計したのが誰なのかは分からない。
今分かっていることは、ビットコインが人類を惹きつけたこと。PoW が、人類に電力を消費させる正当性を与えたこと。地球上に分散された計算能力資源ネットワークが誕生したこと。
生成 AI はその新たな生態系の中に棲み始めている。電力と計算能力資源の集中する土地に、AI は拠点を構える。まるで次の文明の胎動のように、新しい時代の社会が築かれる。
