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仮想通貨 用語解説

Oracle(オラクル)

ブロックチェーン用語としての Oracle(オラクル)を解説します。データベースの製品・会社とは関係ありません。

元々の用語は、宗教的なもので、神のお告げという意味合いがあります。ブロックチェーンでのこの用語の使い方を考えれば、まさにそんなイメージがふさわしい適切な選択だと思えるでしょう。

オラクルが何かを説明するにあたっては、スマートコントラクトが使えるブロックチェーンを想定して話をすすめます。ここでは、Ethereum としましょう。Ethereum を使って、ブロックチェーン上にスマートコントラクト(何らかの処理をするプログラム)を構築し、取引や契約事を制御し、自動化する場面を前提とします。

スマートコントラクトによってあらゆる処理が改ざん不能な契約事として共有され、その判断や処理が自動化されるというのが、ブロックチェーンが創る社会に抱かれている夢です。その世界では、金融取引はもちろん、IoT からソーシャルメディアに至るまで、あらゆる場面でイノベーションが連鎖します。
しかしそれが今すぐには実現できない理由があります。夢の世界の実現に向けて、現実社会にブロックチェーンが溶け込んでいく時、ひとつの課題が出てくのです。

ブロックチェーン上のデータは、書き込まれれば改ざんするのは事実上不可能です。だからこそ、書き込まれているデータは信用することができます。そのおかげで、取引相手を信用しなくても、データを検証すれば取引の前提となる事実が判明します。そこがブロックチェーンの強みです。
問題は、ブロックチェーンに最初から誤った情報が書き込まれた場合です。いくら改ざんが不可能であっても、誤った情報が書き込まれていれば、すべての前提が崩れてしまいます。ブロックチェーン以前の情報、ブロックチェーンの外側の情報、実社会の既存のデータというものは、その信頼をブロックチェーンだけでは担保できません。

ブロックチェーンが溶け込んだ社会では、スマートコントラクトによって契約を自動化し、取引の際の信用確認プロセスをシンプルにすることができるのにも関わらず、ブロックチェーンの中に入っている情報がそもそも本当かどうかという、とても重大な疑念が残されるのです。
これが、先程述べた課題です。

実例を考えましょう。例えば、ドル円の価格が一定の方向に動いたら保有している仮想通貨を売買する、という自動化処理をスマートコントラクト上で実装したとします。その中で、ドル円の価格の情報はどこから参照すれば良いでしょうか?価格情報を配信している Web サイトから取得しても良いかもしれませんが、そこに書き込まれている情報は正確でしょうか?価格情報サイトに到達する以前に、書き換えられたりはしていないでしょうか?一時的な不具合で、価格情報サイトの表示に誤差が生じることは無いでしょうか?参照しているサイトが乗っ取られたり、データが書き換えられることは無いでしょうか?
ドル円価格情報のような、多くの人に影響を与える情報であれば、ある程度の信頼性は初めから確保されていますし、複数の情報ソースを参照して間違いがないかを確認することも設計次第では可能でしょう。でも、地域の気温や建物の室温、お店の売上データ、自動車の稼働状況など、利用者が限定されている外部の情報を判断材料に処理を自動化する場合には、この問題は深刻さを増します。

もし、ブロックチェーンにデータを投入する入口となる部分が正しく設計、運用され発展していけば、ブロックチェーンとその上で共有され実行されるスマートコントラクトの活用によって、社会インフラの多くが低コストで信頼性を向上させ自動化もできるようになります。
そんな夢の世界を実現させるために大切なのが、実世界とブロックチェーンの間にあって、データを受け渡す窓口です。ブロックチェーン用語では、それを Oracle(オラクル)と呼びます。

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