技術的側面から振り返ります。まず、採用されたのはビットコインの Lightning Network でした。ビットコインを直接使う場合、送金に時間がかかり、手数料も馬鹿にならず、少額決済には全く向きません。そこで、政府が公認の Lightning Network 対応ウォレット Chivo を発行し、国民がそれを利用する形態が取られています。
なお、同ウォレットの利用には、ID の登録が必要だそうです。KYC もしっかりやっているわけですね。
Chivo は出だしからトラブルに見舞われませいた。当日に不具合が見つかったり、機能制限によって不満が出たり、結果的には順調とは言えない滑り出しの印象を残しました。ここぞとばかりに大手メディアには報道されています。
ですがそれらはすぐに修正されています。着目すべきは、大統領が不具合のことを Twitter で発表し、他にも不具合や改善点があればコメントをしてくれと呼びかけたことです。Startup もびっくりの対応ではないでしょうか。ゲリラ的なやり方です。
ちなみに、Chivo しか使えないわけではもちろんありません。そこはビットコインのオープンなエコシステムです。
Lightning Network を使うということで、通常のビットコインの直接取引と違って、決済プロバイダーを経由した決済になっています。アメリカの Flexa がそこを担っていると公表していました。他にも、OpenNode が使われている場面も Twitter で拡散されていましたので、複数の決済プラバイダーが利用されているようです。
Flexa はインタビューで、エルサルバドルを含め国際的に事業を展開している会社から、ビットコイン決済についての相談があったと語っていました。法的に問題の無い方法でビットコインを受け取ったり管理したりする方法を模索していたのでしょう。確かに、値段の決め方から受け取り方、保管、ドルへの換金、課税など、検討すべきことは多々あります。レジでの抜き取りみたいな、セキュリティーリスクだって深刻です。課題は多いですが、うまくいきはじめれば、全世界からお金を受け付けられる事業体にできるので、どこも興味はあるのでしょう。
その他、外国人は非課税になるという話が興味深いです。
受け取ったビットコイン資産の価値が向上しても、キャピタルゲインには課税されないようです。また、給与として受け取った分についても非課税と言及されています。これは新しいパンドラの箱を開くことになりそうです。ここもまた、大国にはできないゲリラ的なやり方と言えるでしょう。
仮想通貨取引所への攻撃でパニックを誘発する人たちがいた事もわかりました。これは推測の域を出ない話です。
エルサルバドルがビットコイン採用を開始した日、仮想通貨価格は全面的に下落しました。すべてが下がったわけではないあたりが今の仮想通貨全体の幅広さ、奥深さを物語っているのですが、下がったときに何が起こったのかについては記憶しておくべきです。
前提として言及すべきは、Coinbase に対する SEC からの通知が、下落の大きな引き金となっていた可能性がある点です。エルサルバドル事後の下落の中、Coinbase の CEO が Twitter で現状を告白していました。この件については別途考えをまとめたいと思っています。
エルサルバドルがビットコインを導入した直後、仮想通貨価格の下落が始まったときに、Coinbase や Bitfinex がダウンしました。その際に、通常の10倍の急激なアクセスがあったようです。アクセスというよりも、そんな跳ね上がり方は、DDoS 攻撃です。サーバーがパンクするほどのアクセスを送られたわけです。それも、大量のランダムなアクセスもとからです。
つまり、こういうタイミングで価格を下げたい人や、ビットコインを葬りたい人が確実にいるということです。愉快犯かもしれませんが、その個人あるいは組織は、日々スパイウェアでマシンを乗っ取り、こういうタイミングでの一斉攻撃に備えているわけです。作戦は自動化されており、価格の下落に連動して自動的に攻撃をかけたのかもしれません。
攻撃者は影響を受けにくい他の取引所や DEX でショートしていたかもしれませんし、どこかの取引所と話をあわせていて対応をしたのかもしれません。それが特定の集団なのか、不特定多数の集団がそれぞれに同じような攻撃を考えたのかはわかりませんが、このようなことは今後も起こることは間違いありません。DeFi の可能性と、恐ろしさを垣間見ました。