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結局はやったもん勝ちの社会・前編

怒られるかもしれないけど、とりあえず見つからないうちにやるだけやってしまって利用者を獲得し、できれば利益もしっかり出して、後から納税しつつ規制に対応する、という伝統的なビジネスの進め方があります。イノベーションが起こる分野はだいたいそうですが、特にアメリカ西海外の企業の得意技でした。その独特の風土もあり、シリコンバレーの専売特許とも言えました。

他の地域では、なかなかそのやり方がうまくいきませんでした。通常はそのやり方ではリスクが高いと思われるため優秀な人材も揃いませんし、グレーを攻めることに対する抵抗があったり、ハイリスク・ハイリターンの経済モデルに投資家も追随せず、規制当局も厳しくなりがちで、文化的にも適合できる場所を選ぶという事情がありました。

ところが、仮想通貨が現れて状況が変わってきました。
金融の規制についてはアメリカは依然として厳しく、スタンスがはっきりしています。世界の金融の中心に上り詰めただけあって、東海岸を中心に、グレーを見過ごしてはくれません。
また、仮想通貨は世界共通の基盤の上に分け隔てなくアクセスを容認する構造になっていますので、利用者を確保する面においても、開発者がリモートで参加する面においても、ブロックチェーン系プロジェクトでは物理的、地理的制限とは関係が薄く成り立ってきました。規制がゆるい場所に本拠地を置く、あるいはそもそも法人化しない、などの柔軟な短期的戦略を採用できてしまうのです。
さらに、そこで対価として支払われる報酬もまた、仮想通貨であることが多く、それ自体の市場拡大にとってプラスとなりました。エクイティーによるインセンティブ付与は、法律に縛られたり、手続きが煩雑になりがちです。一方、トークンによるシェアの分配や報酬の支払いは、流動的だし、劇的に低コストだし、お互いに信用をするコストも下がるため、利点が多くあります。コンプライアンス面においては懸念が残りますが、そもそもスタートアップでそこを気にして始めるケースは稀であり、Ethereum という成功事例もあるおかげで、徐々に市民権を得始めています。

思想的にも、仮想通貨界隈の基本スタンスが際立っています。資本主義一辺倒、シリコンバレー絶対主義に対する不満や不信が形成させ、対抗する環境を整えています。もはやかつての輝ける場所は、カッコイイ場所では無くなりつつあります。

今、アメリカを出し抜く形で、世界中でイノベーションは加速しています。

最初は日本で、それが大きく進み始めました。しかし日本は真面目に規制に取り組むスタンスを崩さなかったため、すぐに主導権を失いました。アメリカのように、やるだけやって後から規制に対応する方法は、実現しませんでした。変えるべき常識が多すぎ、またいきなり金融という最も変えることが難しい分野のひとつに挑んだこともあり、大枠としては何も変えられずに時間が過ぎました。そればかりか、むしろ規制は強化されて締め出しが始まるという、逆効果をもたらしたと考えることもできます。多少のトラブルでも、日本においてそれは業界の死を意味し、あまりにも変化に臆病な風土が形成されて強化されていきました。
ビットコイン市場で日本の存在感が完全に消えたのはそのためです。

では、どこで、どんなやり方がうまく行っているのでしょうか。それについては後日まとめてみます。

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