中国のビットコインマイニング関連事業会社といえば BITMAIN ですが、そんな中国のマイニングマシンを使った事業に関しての話題です。
中国を拠点とする事業パートナーより、ある時期にマイニングマシン価格が下落する要因があると聞きました。その理由が想定外だったので、紹介です。
まず前提として、マイニングマシンの価格は BTC 価格と連動しているという重要な事実があります。マシンの性能がかわらなくても、なんならムーアの法則に追いつけなくなって計算能力という市場での競争力を失っていても、ビットコインの価格さえ上がれば、マシンの価格は上がるのです。
当然、最新のより良い電力効率、熱効率のマシンが出てくれば、その新しいマシンの価格が高くなります。しかし、新しいマシンがそれほど高頻度で出ないのが ASIC マイニングマシンの特徴です。製造しているメーカーが極めて少数で、実質2〜3社しかありませんし、その心臓部分の半導体チップを製造できる業者なんて、1〜2社です。そのため、製造ロットの違いでの性能差や、電源周りの改善で若干の熱効率が良くなったバージョン、オーバークロックして性能を上げたものなど、同世代の半導体チップを使っていても価格に差が出たりします。
さらに、市場全体に供給されている計算能力の総量(ハッシュパワーの総量)や、それによって変動する採掘難易度、そして採掘報酬の量が要素となり、マシンの価格は変動します。
Ethereum をはじめとするいわゆる Altcoin の採掘環境は、マイニングアルゴリズムが異なるため全く条件が異なってきますが、BTC や BCH など、ビットコインの主流の系譜に関わるマイニングマシンに関しては大体そういう状況です。
以上が前提です。さて、ここからが本題なのですが、ほぼ同じマシンで、ほぼ同じ市場環境でも、マシンの価格が急に動くことがあります。その主な要因のひとつは、中古市場へのマシンの流出です。
実は中古マシンというのは、ビットコインの ASIC のマイニングマシンに関して言えば、比較的価格が下がらない傾向があります。理由は、初期不良が発生する時期をすでに乗り越えている可能性が高いこと、電源や付属部品が揃っておりすぐに動かせる状態にあること、新規購入すること自体が難しい市場環境にあって、入手できる機会が限られていること、があります。
初期不良は他の一般的なパソコンやサーバーに比べれば高いため、稼働実績があるマシンで占められているということは重要です。付属品に関して言っても、電源などは通常別で用意する必要があるため、マシンに適応して稼働することが保証されている電源があることは重要です。そして何より、買えるというのが大きいです。この「買えない問題」は機会があれば詳細を書きたいと思います。
そんな価格が下がらない中古でも、最後の要素によって大きく上下するわけです。採掘難易度が変わらないのにビットコイン価格が上がっているような市場環境だと、マシンを動かせば動かすほど利益が出ます。逆に、みんながマシンを投げ売ると、ビットコインのハッシュパワーの総量が下がり、採掘難易度も下がり、それを見たビットコイントレーダーやファンドはビットコインを売りに出て、結果として負の循環が起こります。2018年はまさにその負の環境でした。
ある時期にマシン価格が下落する要因がある、という出だしへの回答ですが、その要因はなんと気候にあります。マイニングを実施している地域で雨季が終わって乾季に入ると、水力発電施設の性能が下落し、結果として電気代が上昇したり、水力発電で稼働しているファームが電力不足で動かせなくなったりするのです。そいう時、しばらく寝かしておくよりも市場で値段が変わらないうちにマシンを売却し、また電力環境が戻った時に買い戻そうという動きが起こります。結果として、中古市場に一時的にマシンが大量に出ることにつながります。
結局はその後買い戻されたり、数ヶ月後にあるべき場所にはマシンがあるのですが、こういう循環が起こっているため、中古市場での価格が上下するのです。雨季の終わりには、下がるのです。2019年の記録で言えば、新型マシンの登場の直前であったことや、ビットコインの半減期を迎える時期であったことによって、より条件が複雑化していました。
その他、石炭発電の大気汚染問題に伴う採掘への規制や、半導体製造最大手 TSMC の半導体製造計画など、予測に伴う要素は多岐に渡ります。果たしていまマシンを買うことは得なのか損なのか。その判断には、ある程度の長期的視点が必要になります。