Steemit のこれまでの経緯を見ていて、気付いたことをまとめました。インターネット上でプロダクトを広めるにあたって、学べる事として抽出しています。特に、コンテンツ配信プラットフォームが必ず必要とする、オンラインでのコミュニティー作りに主眼をおいています。ユーザーを多く獲得するために、それはもはや不可欠です。ユーザー同士のつながりの結果、またはユーザーの集合体、あるいは所属先となるコミュニティーの育て方についてです。
ユーザーのコミュニティーを雪だるまのように小さな集まりから大きな集まりに成長させるには、やはりニッチな話題、市場に特化するところからスタートし、固い核となる集団を作ってから、段階的に裾野を広げる段階的拡大が必要です。そのためには、タイミングごとに、最適なインフルエンサーとなるユーザーの獲得をしていくことが大切です。
しかし一方で、取り扱うコンテンツの分野をニッチに特化しすぎた結果、小さすぎる市場に特化してしまう失敗も多く見られます。バランスが難しいのです。
2ch や Reddit に代表されるように、コンテンツ配信プラットフォームは、言語や文化圏ごとに独自に発展するため、世界共通のプラットフォームは成り立ちにくいです。そのため、どこまでいってもニッチではあり続けることになります。
Steemit はもともと、仮想通貨やトークンエコノミクス、ブロックチェーンという世界共通の急成長市場をターゲットにしていました。それは時代の流れとしては ICO という資金調達兼マーケティング活動と相性が非常に良く、製品自体の専門分野に関心のあるユーザー層を効率よく集めることに繋がりました。しかし ICO バブルの崩壊、仮想通貨価格の下落などを経て、主要な集団が徐々に去っていったのも事実です。価格上昇という要因に大きく引っ張られて関心をあつめ、ユーザーを集めていたので、良くも悪くも表面的なトークン価格に左右される結果となりました。
いまでは、新天地として特定の文化言語圏に受け入れられ、韓国で使われているようです。
日本でうまく行っていると思われる事例としては、Cakes から Note への躍進があります。
まず初めコンテンツの質がある程度約束されたインフルエンサーを囲い込み、有益な情報を発信する媒体としての Cakes の登場がありました。その後に、個人が記事を販売できる媒体としての Note が注目される流れになっています。Note は個人が簡単に記事を発信できるブログプラットフォームですが、単なるよくあるブログサービスとの差別化として、昨日の単純化、書くことへの集中を意図していることが伺えます。
これは、Medium の基本理念と似通った部分があります。執筆する喜びと閲覧する喜びに特化し、製品開発を進めたのだと思われます。ブログサービスとして有象無象の中に登場させるのではなく、記事を書く体験そのものを売りにした点が他との差別化要因となりました。WordPress が方向を転換し、フレキシブルで多様なニーズに応える製品から、発信する喜びに注力する製品に舵を切ったのも同じ時期です。
つまりは、Cakes で著名なライターを巻き込んだメディアプラットフォームを築いておき、そこに触発された個人の発信を Note で後押しするという流れです。
また、Note は有料メルマガという従来から存在しながらも発展がなく停滞していたビジネスモデルの進化とも評価できます。有料のサロンブームもあり、有料メルマガの著名な発行者を巻き込めたことは大きかったと思います。そんな有料メルマガの発信に憧れた人たちは、次は発信者側として参加することになっていきます。そうして雪だるまを大きくしていく過程で、Note はいわゆる日本、東京のスタートアップコミュニティーの内輪での評価を高める事で、流れを加速させました。
内輪の盛り上がりは何よりも大切です。個人的にはあまり良しとしたくない事実ではありますが、残念ながら今も昔も、その重要性は変わりません。それによって、Twitter という一段階上のメディアで拡散されることにつながるからです。
つまりは内輪のノリこそが、オンライン上で作られるコミュニティーの正体です。いかに内輪の範囲を大きくしているか、というのが課題だというオチです。