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なぜ今も仮想通貨取引所が誕生し続けているのか

最近も取引所が新たに誕生するというニュースが度々流れます。仮想通貨価格が上昇すれば誕生するので、一種の季節のお便りなものと考えることができるのですが、過当競争で差別化が難しい段階に入ったように思われている取引所の事情を考察してみます。

まず、そもそもまだまだ過当競争ではないと言えるかもしれません。詳細なデータを調べたわけではありませんが、他の金融取引の市場と比べれば拡大の余地があるように見えますし、まだ仮想通貨を全く知らない層はたくさんいます。
世界共通の市場で戦っているように見える仮想通貨取引所ですが、実際には仮想通貨を買うための現金側の制限のおかげで、国や地域単位で競争をしているのが現状です。そのため、まだまだこれから盛り上がる地域は出てくると言えます。資源の乏しい国の中には、かつての香港やシンガポールのようなポジション獲得を狙っているところは多くあります。

また、取引所としては儲ける方法がたくさんあることも、増え続けている理由です。まだまだ、やり方次第では大きく儲けられるのです。
利益幅の大きさは、取引所のスプレッドや手数料で調べようと思えば誰にでも調べられます。トレードが活発化するほど、取引所側には儲けが生まれますし、仮想通貨の時価総額が上がればそれを保有している取引所の資産価値も上がります。

ただし、取引所に有利すぎるため、先進国の間では顧客の保護や他の産業とのバランスを考慮して、規制が強化されています。国によっては、割と厳しい扱いをするところもあります。日本もそのひとつです。過去数十年で、やってはいけないことのルールを定義し、金融ビジネスとそれを取り締まる国家のバランスが形成されていましたが、それを無視して急成長した仮想通貨金融という市場は、敵を短期間で作りすぎました。

逆に言えば、制限さえなければとてもおいしいビジネスということになります。現代の金融ビジネスの常識から言えば、犯罪すれすれのことも行われています。(つまりは金融ビジネスがこれまでいかに現代の常識から言えばひどいことをしてきたのかがわかるとも言えます。石を投げている人を見ていれば、よくわかります。)
そういう背景があるため、規制が緩い国で今も次々と新しい取引所が生まれています。国として利益を得るために、お金を呼び込むために、産業をそこにもたらすと信じて、あえてゆるくして見過ごしているところもあります。そこに産業など生まれないし、仮想通貨の本質を理解すれば自滅的な行為ではあるのですが、短期的に現金資産が増える事や雇用が生まれることが政治上正義なのでしょう。利益幅が大きくなると国際社会からも非難され、立場を悪くすることになります。マネーロンダリングの温床となれば、国際社会からの介入にうってつけの材料を提供することにも成り得るのですが、まだ市場が小さいからそこまでには至っていないということでしょう。そんな短期視点の国ほど、一瞬で禁止したり違法にしたりするので、取引所も顧客も相当にリスクが高いと思うのですが、あまりそこを考えていないようです。

ちなみに、日本の取引所ははあまり儲かりません。仮想通貨が急騰すれば大きな利益を生み出したりもしますので、2020-2021 の期間は良かったところが多くありました。しかし企業として仮想通貨を保有するときの高い税率と、厳しい監督規制の対応コスト、セキュリティー対策などやるべきことが多すぎて、大手しか生き残ることが出来ません。仮想通貨が下がれば、一瞬にして税金と維持費用とセキュリティー上のリスクが残ります。多面的なビジネスモデル展開をしないと、取引所単体ではやっていけないでしょう。
その上、取引所にはレバレッジ規制が行われ、取引所側の旨味はますます無くなっています。大口の顧客としても、使う理由が無くなっていくわけです。XRP 取り扱いの場面でも問題となりましたが、新規上場通貨の発行元や主体とどのように利害関係を持っていくかや、マーケットメイクなど、いろんなビジネスの在り方が取引所には本来あります。でも日本では、美味しいビジネスが全くできないことになっています。そして残されたのは、高いスプレッドでの仮想通貨の販売というわけです。

DeFi や、銀行で言う定期預金や投資信託のようなビジネスモデル、マイニングやステーキングなどの収益性がとても高いビジネスは日々誕生していますが、日本の会社では直接手を出すことはできません。それぞれにスキームを考えて取り入れたりしているのでしょうが、それについてはまたの機会に考察してみたいと思います。
他にも、NFT など、ブロックチェーンの真価を発揮するという言い方ができるものに注目が集まっています。NFT そのものに価値があるわけではなく、その紐付いた先のものに価値があるので、取り扱う取引所や販売所としては、それ単体でビジネスにするには工夫が必要です。
日本では、NFT を中心に、金融商品から遠いものに力を入れていく会社が出始めました。一方で、証券会社は、STO を可能性として検討しています。STO の中では各種権利がトークン化されたものが取り扱われるので、NFT と STO のマーケットは、いずれ 重なる部分が生まれてきます。そんなことを踏まえて、いま NFT からスタートしている会社は、長い計画で収益化を考えているはずです。

さて、結論です。顧客側に、儲かるというインセンティブが発生するタイプの取引所につては、国際的な規制が整わない状態で価格が上がっている今がチャンスということになり、これからも増えていくでしょう。スタートアップの時価総額の成長記録を塗り替えた Binance を皆が追いかけています。
しかし、いかに規制を逃れるかという点にビジネスとして成功の要因が集約されますので、大変にリスクのある産業となります。儲かるときの儲かり方が大きいですが、その分、外部から、あるいは内部からの各種攻撃にさらされるリスクが大きくなります。鉄壁の守りでも、創業者が初めから悪いことを考えていた場合、悲惨な結果を招きます。たいていの規制がゆるい国では、そんな高度に仕組まれた犯罪を防ぐことが難しく、追跡もできないでしょう。そこまで考えている人がいたとしたら、初めから追跡が難しくするように資産を移動さたりするはずです。人類には、現金という最高のロンダリンググールがすでにあるのですから。

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