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雑記

意識を失うという感覚

文字通りのことですが、意識を失うという経験をしたことがあり、そのときに感じたことを記しておきたいと思います。物事の考え方の前提が一度リセットされるような、自分が築いてきたパラダイムを変容させられるような体験でした。

それは、人生において数回、経験があります。一番新しいのは数年前のことでした。
少しだけ急いで移動したあと、訪問先のビルの入口で一息ついた瞬間に、気を失ったようです。それ以前と比べて、このときはすぐに記録をとったので、よく覚えています。

気を失って戻ってきた瞬間、何が起きたのかは全くわかりませんでした。客観的にその状況を見れば、地面に横たわっている状態です。どういう軌道でそうなったのかは知る由もありませんが、横向きに倒れたので、体と頭の右側面を地面につけた状態でした。
自身の感覚に話を戻すと、正確には寝ていたともわかりませんでした。全く、何もわからない状態です。比喩表現ではなく、無の状態です。何もわからない、考えることができない、そもそも何も考えていない状態です。自律的に臓器が動いているだけです。

すべて何もかもわからなくなって、無となった感覚です。言葉にはならない恐怖感のようなものだけがあります。これが正常な状態では無いということだけが感覚的にわかるからなのか、あるいはこのままでは命の危機があるという本能の知らせなのかわかりませんが、この状況はまずいということが言葉ではなく感覚として全身に伝わってきました。

次に、地面の冷たさを感じました。冷たいということは感じていますが、言葉にはなりません。冷たいという言葉が内側からでてくることはなく、ただ冷たいと原始的に感じたのです。この段階では、完全に言葉を奪われており、論理的思考どころではなく、認知できる情報も実に原始的なものに限られていました。
それから遅れて、痛みが来ました。これも当然に、度葉にはできません。ただ、不快なのです。これを痛いと言う、と初めて教わるような感覚と言えば良いでしょうか。
次の瞬間、重力が来ます。その重力の刺激で、横たわっているということが客観的な映像で理解できたのです。

それからどれぐらいの時間が経過したのかわかりませんが、今自分が倒れていて、地面に寝ていることがわかってきます。この段階で徐々に言語を獲得しており、思考が戻ってきます。寝起きと似た状態です。
多少痛いけど、特に怪我はしていないから、一時的な状態だなとわかってきます。

すると、一気に五感が正常に戻り、急に音や映像が飛び込んできます。新鮮でした。自然と、今のはなんだったんだろうと考えるようになっており、異世界には転生していないなとか、余計なことまで考えていました。その後はもう正常に戻り、何事もなかったように行動を再開し、目的地へ到着できました。

この時、倒れた方向が良かったようで、何にもぶつからずに地面に伏しただけでした。たまたま帽子をかぶっていたので、頭へのダメージもありませんでした。薄暗く最も自動車事故が多くなる時間帯だったので、逆側に倒れていたら車に踏まれていたかもしれませんが、そういう不幸なことは起きませんでした。

後で考えたら、この記憶そのものが正確ではないだろうと結論付けられます。言葉を失ってあそこまで正常な思考から逸脱していた状態で、きちんと記憶が形成できるはずが無いと考えたからです。断片的な情報や残留思念を元に、脳機能が正常化した後で記憶を生成し、記録映画を見るような感じで出来事を言語化、映像化して保存したのではないかと考えています。
どこまでが現実で、どこからが虚構かなど自分自身にもわかりません。ただ脳がそういう情報を保存したということだけが結果です。

後になって、全く別の時に、意識を失ったわけではありませんが、同じように言葉や認識を奪われた感覚は体験しました。言葉に出来ない絶望的な恐怖感です。

それは、睡眠中に起きました。目覚めて、というか目覚めそうになって、自分が何なのかわからない感覚で覚醒したのです。まずここがどこかがわからないという恐怖がきます。場所というか、状況がそもそもわからないのです。場所という概念があったかも定かではありません。思考している自分自身の存在についても、納得して理解しているわけではなく、自分というよう感覚は持てずにいました。これはなんだ?という感じの思考が、言葉を使わずに行われます。例えて言うならば、今さっき意識が生成されたような感覚です。
だんだんと、いま寝ているということがわかるようになりました。そうなると、ここはどこだということを前よりは解像度を上げて思考しはじめます。どこか、高層階の窓際だという気がしていました。窓の下、地面までは相当に遠いということを知覚したような錯覚を覚えます。でも、まだ自分が何かがわからない恐怖が残されています。
そうこうしているうちに、ただ寝ていて目が覚めただけだと分かってくるのです。映画を観るよりも、生きたスリルをあじわった感じがして笑えてきます。

特に何か落ちがある話ではなく、ただそういう経験があったということを記したかったのですが、同じようなことが他の人にも起こっているのかなと疑問に思ったので、記録しておくことにしました。

変な話ですが、あの感覚は貴重なものでした。冒頭に述べたように、感覚や思考がリセットされるのです。自ら求めて得られるものではありませんが、深い瞑想に近い体験でした。

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