最近 WeWork の動向からも注目されているソフトバンクのビジョンファンドですが、2018年2月に公表されている内部のビジネスモデルと会計処理についての資料を改めて見て、理解を深めたいと思います。
この資料が出た段階では夢の膨らむ部分しか想像できなかったのですが、この運用資金から決して少なくない割合が WeWork に投資されており、その WeWork が IPO に際して失態を続けている現状を見ると、リスク面の大きさも気になってしまいます。果たして、ビジョンファンドは、そしてその大元であるソフトバンクはこの局面をどのように乗り越えていくのでしょうか。
資料はこちらを参照しています。
また、こちらの記事でもよく紹介をされています。
ビジネスの流れ
P.7 より、4つの段階を経て資金が流れるビジネスとなります。
- LP からの出資コミット
- 投資先の選定
- 投資実行と業績の改善
- 配当・キャピタルゲインの分配
実際にお金が動くのは、3-4です。そして、ファンドの管理報酬と投資成果報酬とで、ビジョンファンドおよびソフトバンクは収益を上げるという事です。
IRR(収益率)の向上方法としては、配当やキャピタルゲインで回収をすることと、その回収率を増加させるために業績改善背策を実施するとされています。具体的には、経営関与とシナジー創出を実施するとのことです。
また、IRR 向上のために、手法が3つ紹介されています。定番の安く売って高く売る、短期間で成果につなげる、の2つ以外に、3つ目があります。それがまさにソフトバンクらしい事項であり、ハイリスクである象徴的な大技です。
その3つ目とは、借り入れを用いてレバレッジをかけた投資を実施する、という手法です。投資する自己資金を最小限にして、借り入れで投資を行うことによって、動かせる資金を増やして利益を最大化します。この部分は、P.14 に詳しく記載されています。
LP との収益分配方式
ビジョンファンドでは、LP は2種類あります。
Class A(成果分配型)
- 投資成果の増減に合わせて分配も増減する
- 投資成果の分配は Class B が優先される
Class B(固定分配型)
- 投資元本に対して一定割合の分配が行われる
- 投資成果の分配は Class A より優先される
ソフトバンクビジョンファンド自体(GP)は借り入れのレバレッジを使ったハイリスクな手法を取るが、LP は Class B を選択することで、リスクを最小限にすることができるというわけです。これによって、LP として参加する投資家サイドは、リスクをコントロールするわけです。Class B は投資成果ではなく元本に対しての一定の割合ということなので、債権の構造です。
意思決定においても、ソフトバンクらしさがあります。GP もファンド自体もソフトバンクグループの連結対象となっており、ソフトバンクグループの経営陣が意思判断できるできる力を持っていることも明記されています。スピーディーな判断には必要だと思います。
市場価値評価の方法
P.29 によると、投資成果である企業の価値判断方法については、次の方法で行うとあります。
- 市場での取引を基にした相場価格を基準とする評価
- 直近のファイナンス事例を基にした評価
- 比較可能な類似会社の情報を基準といた評価
- キャッシュフロー計画に基づいた評価
当然といえば当然のものですが、どの順番で評価を行うかが明確に記されているのでわかりやすいです。
投資成果の分配方針
P.38 に、投資成果を分配する例が載っています。まとめると次のようになります。
- ファンドからのキャピタルコールが1,000あった場合
- Class A(成果分配)でソフトバンクグループが300
- Class A(成果分配)で外部投資家が300
- Class B(固定分配)で外部投資家が400
このように1,000が実際に出資されたとします。
- 投資の成果を評価して2,200(つまり利益が1,200)だった場合
- ファンドの運用の経費など費用が200
- GP の管理報酬が50
- GP の成果報酬が200
- Class B(固定分配)の投資家へのリターンが50
- 残りを Class A である外部投資家とソフトバンクグループが1:1で分割
- 350
このように、1,200の利益が分配されます。
つまり管理報酬は5%程度であり、GP:LP の分け方は20強:80弱ということになるでしょうか。一般的な相場である2%の固定管理報酬と20%の投資成果報酬に近いしいモデルとなります。