半自動運転が当たり前になって、明らかにひとつ、感覚として変わったことがある。カーナビの役割が、人間から車への“言語”になったということだ。
かつて、ナビは目的地に迷わずたどり着くために使うものだった。最短ルートを案内してくれる、効率化のためのツールだった。でも今は違う。ナビは「車に目的地を伝えるためのインターフェース」になった。
たとえば、いつも行っている場所であっても、必ずナビに目的地を入れるようになった。道順なんて知っている。それでも、きちんと「車に伝える」必要がある。伝えておかないと、車がどう判断するか分からないからだ。
実際にはカレンダーと連携していることが多いので、目的地情報はあらかじめ車に共有されている場合もある。だからこそ、カレンダーに予定を入れる段階から、「車との会話」を意識するようにもなった。
どのくらいの距離か。出発時間は妥当か。その情報をどう車に渡すか。スケジュール入力すら、車とのコミュニケーションを考えるようになった。
ウィンカーも同じだ。後続車のためだけではない。「ここで車線を変えてほしい」「そろそろ曲がりたい」という、車への意思表示でもある。こうやって、人は「車に意図を伝える」という意識を自然と育むのだろう。
これらの行動は、いずれ学習素材となって、より効率的で自然なコミュニケーションを可能にするだろう。伝え方が変われば、理解のされ方も変わる。そして、車が自律性を持ち始める今、人間の役割もまた、「運転」から「対話」へと移行しつつある。
