Binance
日本の仮想通貨市場には、ネガティブな出来事が立て続けに起きています。
1つは仮想通貨取引所「バイナンス」が日本での展開を諦めたことです。金融庁にはまるで、犯罪を犯したかのような怒られ方をして、日本市場から去っていきました。
彼らはすでに大きな業績を残していました。もちろん様々な方法で規制を回避していたり、税金の面で他の企業と同じ土俵で戦っていないという面ももちろんありました。とはいえ、真のフィンテック企業としてイノベーションのど真ん中をいっていた企業だったのですが、残念ながら日本進出は叶わなくなってしまいました。
このこと自体は大きな損失だとは思っていません。ルールに従わないといけなかったので、仕方がなかったとは思います。ただ、あれほど攻めの事業ができた会社は、これからも必ず成長していきます。そこに日本の会社・顧客が関われなくなってしまったことが大きな損失です。そして何よりも、これをきっかけとして、市場の盛り上がりが日本から外に出た瞬間でもありました。
Coincheck
さらに残念なのが、コインチェックの買収です。安すぎる、あの買収です。再建という意味ではポジティブかもしれませんが、今後の方針をみると、どう考えても牙を抜かれていて、僕の好きだったコインチェックではなくなってしまいました。創業メンバーや働いている人たちのことはいまも応援していますが、新しいコインチェックを積極的に応援できる要素が事業内容からは失われたと感じざるを得ません。エンジニアが意思決定できていた貴重な仮想通貨取引所でしたが、今はスーツの温床です。これから長い時間をかけて、普通の会社になってしまうのかと思うと、寂しい気持ちがします。兄さんはわかってない。
Kraken
そして、極めつけは、仮想通貨取引所「クラーケン」の日本撤退。日本市場を完全に諦めてしまったわけではないと思いますが、クラーケンは当面、日本からいなくなります。これには2つの大きな意味があります。1つは、様々な ICO に前向きで、新しいテクノロジーが生まれるきっかけとなった世界の中心的な取引所であるクラーケンが、日本の市場をもう魅力がないと判断してしまったということ。規制やそれにかけるコストを天秤にかけた時に、日本の市場に集中する理由がないという判断をしてしまいました。もう1つは、クラーケンが撤退したということが世界に伝わっているということ。クラーケンですら日本でやっていけないことが分かったので、日本に進出しようとしていた様々な企業が二の足を踏むのは間違いありません。
とても残念な日本の対応
日本の既存の仮想通貨取引所・事業者にとっては参入障壁があっていいと思うかもしれませんが、そんな単純なことではありません。日本の市場がまたガラパゴス化して、消滅して、世界のスタンダードから距離を開けられていくのは明らかです。金融庁のルールによって、イノベーションの芽が摘まれてしまったと明確に認識しています。
金融庁が育成路線を転換して仮想通貨業界の監督を強化していくという日経新聞の報道もありました。前向きな行動ができずに、規制だけはして、イノベーションの目を摘んで、大事な取引所を日本から逃してしまう。そんなことをやっているこの国からイノベーションが生まれるでしょうか。そんな市場に自分が海外から会社を招き入れたいとはとても思えません。
幸いにもこれまで、日本の市場を目指して世界中の様々な仮想通貨関連企業が来てくれていましたが、これから先、日本市場に来て欲しいと思えなくなってしまいました。人口が減少し、常に右肩上がりではない経済状況の日本。そんな中、こんなにも先行きの明るかった仮想通貨の市場を日本は手放そうとしています。
今回の規制の判断によって、確かに問題は減るかもしれません。既存の事業者にとってはそれなりの延命治療が施されたように思うかもしれません。しかし、新しいイノベーションはここから生まれないですし、新しい ICO も生まれません。本当につまらなくなったので、もう日本の市場なんて忘れていいと思います。日本市場よ、さようなら。「日本の仮想通貨市場が世界トップクラスに盛り上がっていた時代がありましたね」と、笑い話にされる日も近いのでしょう。
残念です。本当に残念です。他人事なので悲しくはないですが、残念です。
例えて言うと、ベンチでたこ焼きを食べている時に、隣にやってきたスーツのおじさんが、ビールとたこ焼きをこぼしてしまうところを目撃したような感じです。別に悲しくはないですが、とても残念に思います。もうそのたこ焼きは、二度と食べることができませんので。