AI 時代の住宅は、根本的に前提が変わるだろう。人と AI の共存を考えたとき、住まいの中にも小規模な発電装置やデータセンターが必要になる。電気や水道のように、計算能力を供給するためのインフラが生活の単位に組み込まれていく。
リビング、ダイニング、データセンター。そんな住宅が一般化する未来が見える。AI のための部屋、データのための空間が当然のように設計図に描かれる時代だ。それは屋上かもしれないし、地下かもしれないし、寝室の隣にあるかもしれない。あるいは、仏壇の再利用という形で、先祖代々のプライベートデータを保存し、活用する場所になるかもしれない。
いずれにしても、エッジサイドにもっと多くの計算能力が必要になる。すべての家庭が小さなノードとして機能し、地域全体が分散型の計算基盤となる。エネルギーと計算能力を地産地消する社会は、住宅という単位から始まるのかもしれない。
もっとも、これはあくまで現状の非効率な AI インフラを前提とした構想にすぎない。AI モデルが進化し、必要な計算資源が減少すれば、小規模なデータセンターそのものが不要になる可能性もある。膨大な端末が相互に連携し、住宅と都市がひとつの知的ネットワークを形成する未来。そのとき、住宅は「住むための空間」から「情報が生きる空間」へと変わる。
AI のための部屋を備えた 3LDDK という住宅モデルは、その過渡期に現れる象徴かもしれない。それは生活の延長としてのデータセンターであり、家庭がひとつの計算単位になる時代の前触れである。
