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2025年の社会情勢

新トランプ政権の誕生

Elon Musk 等、モノづくりに実績のあるデジタル実業家が政権に参画し、計算資源をいかにアメリカの経済成長と国家安全保障に活用できるかを見据え、実行に移している。ポイントは、ソフトウェアを中心としたドットコム企業の残党ではなく、モノづくりに比重を置く企業が力を持ち、影響力を増している事だ。分断された世界でも生存していくための、国力の強化に直結する。同時に、その国家の枠組みを超えてしまうほどの影響力を持った企業が、国家との相互依存関係を強化し、相互に影響し合うことで次の10年を生存しようと画策していると理解できる。

シリコンバレーで急成長した、計算資源とその利活用を軸に、アメリカは産業基盤を強化してきた。国家と企業とが相互に影響し合い、結果として独占的な市場形成に至る企業を複数排出してきた。大成功だった。しかしそのモデルも一筋縄ではいかない時代に突入し、今回の変革に至る。

エネルギー戦略転換

世界的に見て、エネルギーの重要性、価値は増すばかりだ。計算資源を稼働させるために必要なエネルギーを大量に保有することは、すなわち圧倒的な経済力、戦闘力、影響力を有することに繋がる。ロシアの現状を見れば、エネルギーのみが重要なわけではないとわかるが、必須の条件のひとつであることに疑いはない。
環境負荷という先進国家間の枠組みを一旦忘れて客観的に見渡せば、エネルギー資源を潤沢に持つ中国やロシアには圧倒的な強みがあると解釈できる。

次世代の経済及び社会を構成する最重要な要素を断片的に有するユーロ諸国は、足並みをそろえるための規制強化によって、先行している国家を牽制している。そこから一気にバランスを崩し、自国が生存するために勝ちに行く判断をするならば、エネルギー政策を転換するというアメリカの判断もあり得たわけだ。

OpenAI の誕生とその衝撃

加えて OpenAI が誕生し、アメリカの市場は大きなショックを受けたのではないだろうか。Big Tech の独占市場が、いともたやすく崩される可能性があったからだ。大量にデータを保有していない OpenAI が、言語生成 AI を実現した。これは、技術的なパラダイムシフトであった。しかも、その OpenAI が非営利団体を標榜していた。急成長した資本主義経済の中から、価値基準においてすらパラダイムシフトが起こりつつあった。
Big Tech に出来ることは、膨らんだ時価総額と市場の独占状態を維持するための、再投資による計算資源の買い占めと、発展的な研究の独占だった。

米中経済摩擦

アメリカと中国が、AI 全盛の時代を前にして、経済政策として、安全保障政策として、AI を活用することは当然のことだろう。蓄積したデータの活用において、有利な立場にあったのは中国だった。それは、決済に起きたイノベーションで世界が思い知ったわけだが、今回の AI 時代においては、これまでの比では無い影響が懸念される。

参考: DeepSeek は何を変えたのか

「The Internet」を止めて、アメリカとの情報を分断した中国。貿易を止めて、中国の半導体開発を止めたアメリカ。そして今、米中共に、欠けた部分を補うための投資が花開きはじめている。

新たな通貨戦略

新生トランプ政権の動きからは、仮想通貨に対する考えも垣間見える。謎のコインを発行して市場から価値を集めている動きもあり、興味深い。構造や技術的仕様は抜きにして評価を試みれば、流動性を失った金融資産を活用するために没収しているようにも見える。眠ったタンス預金が潤沢にある国もあるが、アメリカが主に中国に滞留していた仮想通貨としての金融資産を吸収しているとしたら、戦略的に仕組まれたものであると思わされる。

既存の金融資産の没収以外で考えれば、外せないのはマイニングだろう。現状、中国はマイニング用半導体(ASIC)を量産できない可能性があり、半導体の成長速度に追随できなくなるリスクを抱えている。一方で、輸出にも制限があるため、販路も限られてしまう。それでもエネルギーさえ潤沢にあれば、自国利用で戦略的優位には立つことができるだろう。
アメリカが、仮想通貨をも用いて新たな国家の通貨基盤強化を図っているとするならば、ここから先はマイニングを取り入れたいはずだ。国家が市場で金塊を購入せず、国家であればこそ、金の鉱山を買うことで資産を保有するように、仮想通貨を組み入れた通貨戦略においても、鉱山の保有が肝になる。要するに、国家は計算資源を保有するのだ。しかし、アメリカはそのための技術を中国に依存してきた弱みがある。
そう考えれば、現状で余剰在庫のある中国と、エネルギーを保有している中国、ロシアには優位性があるのかもしれない。対抗してアメリカは、エネルギー戦略も書き換えてきたわけで、本格的な計算資源の戦いが始まったと言える。
AI 時代のため、というのは当然として、同時に経済・通貨戦略としての計算資源の獲得は各国が考える課題となるだろう。

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DeepSeek は何を変えたのか

中国からやってきた DeepSeek が話題になっている。OpenAI の ChatGPT 並みの性能であり、オープンソースで公開されているモデルもある。

これはゲームチェンジャーに成り得るのか?

もちろん、成り得ると思う。

公開されている情報を見る限りは、OpenAI/Microsoft、Google、Meta に対抗するような形で大規模な計算資源を投入し、開発されたという。Nvidia の半導体も大量有しているとの記事もある。

How small Chinese AI start-up DeepSeek shocked Silicon Valley

後発だけあって、既存の製品やオープンソースプロジェクトを参考に、改良点を加えられていることが興味深い。最大のポイントは、先端半導体をこの先も買い続けることが難しいという背景を踏まえ、先端半導体に依存しない仕様を目指してる点だ。

通常は、エネルギー効率を良くするため、半導体の構成を変えてみたり、生成 AI に関する処理の役割ごとに最適化した半導体を活用したりする中で、先端半導体にのみ依存しない AI モデルを構築していくのが王道であった。ところが今回は、手に入らない半導体資源という制約を前提にしている。あるいは、世代遅れの半導体を用いて、それでも速度もエネルギー効率も良いモデルを開発しようと明確に目指していたのだろう。
エネルギー問題や、半導体の限定的な入手による制限がきっかけとなるのでは無く、そもそも先端半導体にリーチできないという事と、一方で環境問題の懸念を除けばエネルギーは豊富に調達できるという立場から、着想して作られたのではないだろうか。エネルギー効率を無視した場合、エネルギーさえ潤沢にあれば勝ち目はある。

さらに考えされられたのが、AI モデルを構築する上でどのようなデータを学習させたのか、ということだ。先行するアメリカ系大手よりも早く、効率よく、他社が追いつけないレベルの性能を出すためには、一体どれほどの密度の濃い情報が、どれほどの量、投じられたのだろう。ここは、アメリカ企業にはできない判断とアクションであった可能性を感じる。

そもそも、決済の電子化に伴う与信情報の利活用において、中国企業のネットワークは先進的であった。生成 AI を用いた経済政策、安全保障政策という枠組みで考えれば、国が協力する形でデータを積極的に活用すれば、民間企業単位で争う次元を超えた性能を出せる可能性は確かにある。それでも、一旦は性能が高くても、今後の半導体の成長に合わせて相対的に性能が下がる可能性が考えられるはずだ。しかしそれすらも見越しているとすれば、対策をとらないわけがない。大規模データと超高性能な先端半導体がそろって必要であるという前提を無視したアプローチで開発され、かつ今後はこれまでの成果に基づいて自己学習強化がされていくのであれば、エネルギーと精密なデータの総量での戦いとなる。そうなれば、優位性を維持できる可能性があるのではないだろうか。

そして今回の無料、格安での一般開放だ。これよにって、多くの人が利用することで、新たな可能性が開かれる。自社、自国だけでは不可能であった、多様性のある追加のデータを集めることができるわけで、シリコンバレー的な動きだ。会社のバックグラウンドも、金融の色が強い。多層的にレバレッジをかけて、経済的効果を狙いながらも、一気に学習を加速させようとしている。
個人的にはそこに危機感を感じるのだが、利便性と経済合理性の前では危機感など無力だ。人々は簡単に情報の価値を手放すことをシリコンバレーが教えてくれた。よって、先行して世に問うことが何よりも重要だった。

発表のタイミングも完璧だ。アメリカの新生トランプ政権が稼働するにあたって、中国企業として、中国として、受けるであろう影響を十分に考え、先行して対策をしているように見える。エネルギーの総量、データの総量。半導体の性能や環境負荷という条件を外し、本気で結果を取りに行く戦いが始まったのでは無いだろうか。アメリカのエネルギー政策の転換は、ここでも大きく意味を持ってくる。

そんなアメリカ企業と DeepSeek の戦いの中、見落としがちな事が2つあると思っている。

  1. 生成 AI の開発において大量のデータはそもそも必要なのか
  2. 今後も継続的に演算性能重視な先端半導体は必要なのか

どちらも No である可能性が示唆されており、肯定されれば市場で評価されている企業の価値が大きく変わってしまう。先行する大手企業の価値とは?金融系企業の強みとは?テック企業の高い利益率の根源は?果たしてどうなるのだろう。

ルールが書き換わるタイミングでのみ起こる、緊張感のある戦争が今まさに起きている。

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半導体活用の先にあるもの

ムーアの法則は生きている、という話と、その先にある技術インフラの方向性の話です。

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