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雑記

AirPods が人体を拡張する

Apple の業績ではなく、AirPods 事業だけの売り上げでも、すでに会社と呼べるレベルになっています。もうただのヘッドフォン製造販売事業ではなく、明確な意図を持って社会の価値観を再定義していくことができるレベルの製品になっているということです。その規模は Uber や Adobe 以上であり、Netflix に近いほどです。ヘッドフォンや音楽機器専門の会社をはるかに超えています。

AirPods Revenue vs. Top Tech Companies

この規模を見て思うことは、すでに Apple はスマートスピーカー市場の戦争を根底から覆しているという事実です。

これまで、リビングルームの中心に据えられるデバイスの覇権をめぐって長い戦いが続いてきました。かつてはテレビが中心に君臨し、やがてそのテレビを操作するためのセットトップボックスへと戦場が移り、その後もスマートテレビやスマートスピーカーという形で家の中に戦場が広がっていました。
ところが、これはもう周知の事実ですが、みんなが見るのはリビングのテレビではなく、それぞれのデバイスになりました。パーソナルなデバイスに全てが集約され、リビングは単に空間を共有する場所となり、コンテンツへのアテンションを束ねる場所ではなくなったのです。一緒にいるけれども、それぞれが違うものを見る世界観です。

その中で他社を圧倒して成功してきたのが、Apple でした。その Apple が、スマートスピーカーでは苦戦しています。Apple TV はポジションを獲得できましたが、スピーカーの方は先行他社に市場を奪われている状況です。しかしそれは、旧世代的な価値観に基づく視点だったのかもしれません。

AirPods 的世界観でいえば、iPhone で家族のアテンションを分断させた Apple の世界観でいえば、スマートスピーカーのようなアシスタントは、個人に帰属し個人の情報を軸にアシストするべきなのかもしれません。そうであれば、リビングに置かれた Amazon Echo でも Google Home でもなくて、耳につけたままになってい AirPods がその役割を担うはずです。実際、AirPods と Siri との連携は良く設計されています。

音楽を聴くにしても、スピーカーで家族みんなで音楽を鳴らして聴くと言うのはすでに過去の幻想になりつつあります。これからは、むしろ個々のメンバーが好きなものを聞いたり、あるいは聞かないように聴覚をシャットダウンしたりすることができる世界ではないでしょうか。選択肢としてもちろん、複数人で同じ音楽を共有する機能は AirPods にもあります。個人が選択できることが新しい価値を生むのです。

イヤホン・ヘッドフォンんをつけたまま会話をするのは違和感を感じたり、失礼に思われたいるする今の価値観への挑戦も垣間見得ます。AirPods Pro を外音取り込みモードにすれば、周辺の音は鮮明に耳に届きます。自分専用のアシスタント Siri を従えたまま、そして音楽を止める必要性もなく会話ができるとのは、新時代の感覚だと思います。
この事実を多くの人が認識すれば、よく映画や SF に登場するような、自分にしか聴こえていない情報を参照しながらの会話もできますし、テレパシーに近いような自然な多次元的コミュニケーションが実現できます。単に遮音性のみを追求したこれまでのノイズキャンセリングヘッドフォンでは、その領域に達することは不可能です。これは、全く違うパラダイムへの移行なのです。

AirPods がここから先に戦うべきは、イヤホンをつけたままにはしないというこれまでの常識です。そこを変革しなければ、常にイヤホンをつけた人は変人のように思われますし、話を聞いていないという思い込みから誤解が生じてしまいます。
パーソナルな空間を維持しつつ、対面のコミュニケーションを可能な限り防がない機能があることが大衆に認知されることで、この価値観は大きく変わる可能性があります。

AirPods は、すでに人類が夢見てきた人体の拡張の実現例です。iPhone が脳の拡張であったように、AirPods は聴覚を拡張し、そこに外部脳である iPhone やインターネットを繋いでいます。これはサイボーグが持っている重要な機能です。
僕たちはすでに、そういう時代に生きています。

「AirPods が人体を拡張する」への1件の返信

[…] そして Apple は今、空間オーディオで攻めています。あれは大変に印象的で、音楽の体験を変えるのは間違い無いでしょう。AirPods もまた、生活を変えるレベルでの体験の変化をもたらしました。空間オーディオとの組み合わせは強烈で、つけるのを忘れたのではないかと思うことが多々あります。 […]

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