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雑記

計算能力を得る権利はマイナーにだってある

Nvidia の一部の GPU には、マイニングへの利用を阻止する機能が盛り込まれています。
具体的には、HDMI コネクターの接続状況や、マイニングアルゴリズム特有の計算の算出によって、性能を半分以下にまで制限するというものです。
それに対して、大変に良い出来事だと評価する意見が見られたのですが、その考え方には違和感があります。

背景としては、世界的な半導体の枯渇が関係しています。GPU に限定しても、2016年ごろから慢性的に不足状態が続いていました。この数年はマイニングだけではなく、VR ゲームの登場や機械学習の急速な普及によって、様々な分野で GPU の性能が必要となり、利用用途が拡大していました。Nvidia の企業としての成長がそれを物語っています。
結果的に少ない数の GPU を複数の分野で奪い合うことになり、高いお金を出しても買うことが可能なマイニングのプレイヤーたちが、大量に GPU を高値で買い漁る事態が起きていました。僕自身も一時期、大量に GPU を購入する側の立場にいました。今でもその残骸として、GPU がいくつか部屋に転がっています。

Nvidia としても、転売が加速してしまって、本来のビジネスモデルから逸脱した市場を形成してしまい、苦肉の策としてマイニングを阻止する判断をしたのでしょう。マイニング専用に高価な専用チップを販売してくることも今後は考えられます。

現時点では、僕は直接的には何の影響も受けていないことなので、とてもフラットな気持ちで Nvidia の対応を見ています。しかし、先日目にしたメディアでは、大変に喜ばしいことだと言う評価が掲載されていました。これでゲームの人たちに GPU が行き渡るという発想なのだと思います。
客観的事実として、マイニングに対する制限を第三者が述べる事は何も問題がないと思います。それでも、ハードウェアの性能を評価するようなメディアの立場で、特定の分野にだけ攻撃的な見解を述べている姿には正直がっかりしました。転売を目的とした人たちを抑制できて嬉しいという意味合いだったのかもしれませんが、もし、ゲームが好きで GPU が買えなかった人たちの気持ちの代弁なのだとしたら、悲しいです。何ら不正なことをしているわけではなく、計算能力を正しいことをするために欲する人が多かっただけなのに。

もしかしたら、マイニングとは単純にお金を稼ぐためだけの小汚い行為だと認識されているのかもしれません。というかそうなんでしょうね。残念ながら。だとしたら、きちんと伝えきれていないマイナー側の責任もあります。

マイニングは、ブロックチェーンの命を絶やさないために、リスクをとってその維持運用をすることを意味しています。値段が安い時には利益が出ないどころか、マイナスだってあります。それが、マイナーなのです。
仮想通貨なんてそもそもが虚業だ、詐欺だ、そんなふうに考える人がいるならば、話が合わないのも当然です。けど、この先例えば NFT によってアーティストに新しい選択肢がもたらされるように、あるいは DeFi によって金融の世界が民主化されるように、その計算能力で作られる土台の上には、人類に大いに貢献するものが芽吹いていくと僕は思っています。

そう言えばそのメディアでは、GPU がビットコインのマイニングに使われているのを避けるため、みたいな意味不明な解説を見かけました。全く間違っています。正確には、ビットコインは専用のマシン(ASIC 搭載のマイニング専用マシン)で採掘されますので、ビットコイン価格と GPU の売れ行きには直接的な関係はありません。主に Ethereum のマイニングで GPU が「現時点では」使われるため、ETH 価格の上昇とは大いに関係があります。ビットコインが上がればイーサも上がるという雑な認識で捉えるのであれば、全く間違っているとも断言できないのですが、ものすごく違和感のある説明でした。誤解が誤解を生む恐れを感じています。

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