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雑記

スタートアップのビジネス展開に起きた劇的な変化

スタートアップは、まずその定義からして通常のビジネスとは違います。大企業と違うのは当然として、安定的な成長を目指すいわゆるスモール・ミドルビジネスとも、決定的に違うものです。スタートアップとは本来、短期間で圧倒的な成長を目指す、ハイリスクハイリターン型の事業形態だと自分は認識しています。

そんなスタートアップのやり方も行きすぎると、バブルが起こります。テック業界は、ドットコムバブル崩壊以降、加熱するスタートアップ投資環境やそのバリュエーションと実態との乖離について、定期的に議論が起こり、ちょっと落ち着こうというサイクルが来ます。
そして今また、新しいサイクルが始まっているのではないでしょか。

ここ10年ほどのスタートアップの王道といえば、アテンションエコノミーと呼称された注目の奪い合いが鍵でした。いかにユーザーの注目を奪うかという点に焦点が当てられて、戦場と化していました。検索エンジンの発展や SNS の爆発は、その最たる結果です。

しかし、この数年は流れが変わったように見えます。注目を集めよう集めようと競争が激化した結果、個人情報の扱いやいわゆるフェイクニュース問題に発展する根深い問題が噴出しました。デジタル空間での人権の問題にまで発展し、2019年の現在は明らかな分かれ道に差し掛かっています。
シリコンバレー企業による市場の寡占化という別の問題もありますが、テクノロジーで人々を解放するどころか、小説1984のように、本当にディストピアが生まれようとしています。

そしてもう一つ重要だと思うことが、サブスクリプション系ビジネスモデルの台頭です。まさにサブスクリプションムーブメントと言えるほど、このビジネスモデルが世間を賑わせています。果たして、皆さんはいくつ定期購読をしているでしょうか。一時期のフリーミアムモデルが嘘のように、今は当たり前にお金を払うようになっています。Apple と Amazon 以降、オンラインでの支払いの心理的障壁も、物理的障壁も限りなく低下していますので、ペイウォールと揶揄された有料前提サービスが今や当たり前となっています。こんな展開、誰が予想したでしょうか。

目先の収益は無視をして、とにかく一気に短時間で低コストにアテンションを集め、そこから集めた個人情報をお金に変えていくというのがスタートアップの王道のビジネス展開でした。
それは言い方を変えれば、みんなが時間を使って注目し、個人情報という対価を支払って、サービスを購入していた状態です。そこから、シンプルに明確に、お金を払うことで直接的に価値の交換をしましょう、という方向に変わったということです。その結果、Fin-Tech ムーブメントと相まって、ペイメント系サービスが急激に加速しているのも理解できます。シリコンバレー系のペイメントサービスはしばらく目立った変化がなかったのに、最近は日本でもペイメントの乱発状態です。

これが良いことかどうかは今は判断できませんが、実態との乖離が大きく最後の最後まで、商業的・社会的インパクトがあるかどうかがわからない超ハイリスクのスタートアップモデルから、定期的な実績をベースに価値を高めていく方向に重きが置かれるようになりました。それは元々、加熱したアテンションエコノミー系のサービスの争いからの差別化として誕生したモデルでした。
一方で、Peter Thiel のように、本来のシリコンバレー的なイノベーションを望み続ける支援者もいます。ですが全体としては、良くも悪くも健全な収益を生むモデルが中心となってきました。

ここ数年は、Basecamp のように、スモール・ミドルビジネスこそ至高、という考え方も根付いてきました。シリコンバレー的な、一発逆転大富豪というのがライフスタイルのゴールだという共通認識が崩壊し、多様化した中で、より時代の流れに合致した、クオリティ・オブ・ライフの高い選択肢が評価されているのでしょう。

仮想通貨業界的には、Binance が見せた実績も衝撃でした。

In the first 3 months from inception, profits amounted to $7,500,000 USD. In the 2nd quarter, profits amounted to $200,000,000 USD.

Benefits of Crypto Part 1 – to Countries | LinkedIn

2017年のことですが、誕生直後からの最初の四半期で、利益が$7.5Mです。そして次の四半期では、$200Mです。利益が、です。尋常ではないことだけはわかります。
その後の ICO バブル崩壊を受けての取引量の減少や、仮想通貨価格の暴落があり2018年こそ数字は落ちていますが、それでもこの程度の市場普及率でこの数字です。この10年の勝者たちが一斉に仮想通貨に関心を抱くのは当然の流れだと思います。

時代は変わります。今、スタートアップの動向が変わっています。

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